「詩音、行きましょう。お爺様にお祝いの挨拶をしに行きましょう!」
娘が帝都メディア大学に合格したことを思い出し、北条敏江は再び誇らしげな表情を浮かべ、二宮詩音を連れて主席の方へ歩き出した。
二宮詩音と北条敏江が近づくと、主席に座る長老たちは二人に視線を向けた。
「お爺様、ご長寿をお祈りいたします」二宮詩音は隣の老人を見つめ、愛らしく微笑んで言った。
雨宮弘は動じることなく、非常に落ち着いた様子で、顔には年齢を感じさせるものの、獅子のような威厳を漂わせていた。
しばらくして、雨宮弘は頷いて承知の意を示した。
「詩音」北条敏江は雨宮弘の隣に座る白髪で老眼鏡をかけた老人を指さして言った。「こちらは帝都メディア大学の客員教授の里村教授よ。早く挨拶しなさい!」
間もなく帝都メディア大学に入学する二宮詩音のため、北条敏江はこの機会に里村教授と知り合いになりたかったのだ。
「里村教授、こんにちは!」二宮詩音の甘い声が響いた。
声を聞いて、里村岩男は微笑んで言った。「二宮詩音さんですね。今年の入学生のことはほとんど把握していますよ。あなたの年齢で帝都メディア大学に合格するのは素晴らしい。これからも一層頑張ってください」
「お褒めいただき、ありがとうございます。必ず頑張ります」二宮詩音は愛らしく頷いた。
北条敏江が何か言おうとした時、後ろから柔らかな声が聞こえてきた。
「お爺様、お誕生日おめでとうございます」
雨宮由衣は上品なイブニングドレス姿で、一挙手一投足に優雅さが漂っていた。
雨宮由衣を見た雨宮弘は、即座に眉をひそめた。
この孫娘に対して、雨宮弘はほとんど良い印象を持っていなかった。ここ数年、雨宮由衣は雨宮家の屋敷に何度も押し掛けて騒ぎを起こし、その度に雨宮弘の彼女に対する印象は悪化していった。今では彼女に会うことすら避けたいと思っていた。
「ふん」
雨宮弘の声には明らかな冷淡さが滲んでいた。
お爺様の雨宮由衣に対する態度を知っている二宮詩音は、遠慮なく雨宮由衣を一瞥して言った。「私と母がお爺様と里村教授とお話があるので、少しの間、席を外していただけますか」
雨宮由衣が何か言う前に、里村教授が突然立ち上がり、眼鏡を直しながら目を細めて、雨宮由衣をじっと見つめた。
「どちらの大学のご出身ですか?」里村教授が尋ねた。