第315章 犬の吠え声に振り返らない

オフィスにて。

「武道の基礎はあるでしょう?」雨宮由衣が尋ねた。

等々力辰は唇を噛んで、「少しは…ただ…」

『ビックリドラゴン1』の撮影のために少し練習したことがあったが、それももう三年前のことだった。

雨宮由衣は直接彼にスケジュール表を渡した。「長く練習していないから鈍っているでしょうね。武道のレッスンを組んでおいたわ。この数日は先生について真剣に練習に励んで。他のことは気にしなくていい。どうでもいい人たちの言うことも気にする必要はない。ライオンは犬の遠吠えで振り返ったりしないものよ」

等々力辰は真剣な表情で頷き、黙ってスケジュール表を受け取った。他のマネージャーは皆タレントに歌やダンスの練習をさせているのに、なぜ自分は武道の練習をさせられているのかとは一切聞かなかった。

また、今日雨宮由衣に撮らされたあの動画が何の用途なのかも聞かなかった。

等々力辰の素直で従順な様子を見て、雨宮由衣の心はさらに柔らかくなった。「今はまだチームを持つ余裕はないから、とりあえず会社の臨時スタッフで間に合わせましょう。でも、将来的にはすべて揃うわ」

この言葉は、約束というよりも、まるで予言のようだった。必ず実現するという確信に満ちた予言。

等々力辰は目の前の男の冷たい表情を見つめながら、死んでいたはずの心の奥底に、久しぶりに温かい流れを感じていた…

……

その後しばらくの間、等々力辰は毎日二つの場所を往復するだけだった。母の見舞いに病院へ行くか、会社で武道の先生について練習するかのどちらかだった。

会社では、皆が新しく来た雨宮白マネージャーが一体どんな大きな動きを見せるのか待っていたが、まさか等々力辰に一本の動画を撮らせた後は何もせず、毎日ただ武術修行をさせているだけだとは誰も思わなかった。

なぜわざわざタレントに武術修行をさせるんだ?時間の無駄じゃないのか?もしかしてアクション俳優にするつもりなのか?

本当に変わった考え方だ…

等々力辰は周りの異様な視線や噂話には一切耳を貸さず、毎日やるべきことをやっていた。

その頃、林浩はすでに青春アイドルドラマの主演を獲得していた。

デビューして間もない二作目で主演を務められるというのは、新人たちが羨むような待遇で、林浩の将来は間違いなく明るいものだった。