オフィスにて。
「武道の基礎はあるでしょう?」雨宮由衣が尋ねた。
等々力辰は唇を噛んで、「少しは…ただ…」
『ビックリドラゴン1』の撮影のために少し練習したことがあったが、それももう三年前のことだった。
雨宮由衣は直接彼にスケジュール表を渡した。「長く練習していないから鈍っているでしょうね。武道のレッスンを組んでおいたわ。この数日は先生について真剣に練習に励んで。他のことは気にしなくていい。どうでもいい人たちの言うことも気にする必要はない。ライオンは犬の遠吠えで振り返ったりしないものよ」
等々力辰は真剣な表情で頷き、黙ってスケジュール表を受け取った。他のマネージャーは皆タレントに歌やダンスの練習をさせているのに、なぜ自分は武道の練習をさせられているのかとは一切聞かなかった。