輝星メディア。
等々力辰が会社に足を踏み入れた途端、全員の注目を集めた。
これまで等々力辰を見向きもしなかった新人や練習生たちが、彼を見かけるなり、次々と自ら挨拶をしてきた。
「辰兄、おはようございます!」
「等々力先輩、おはようございます!」
「先輩、おめでとうございます!微博の動画を拝見しました。本当にかっこよかったです!」
「今回の林楽天役は絶対に等々力先輩しかいないと思います!」
数日経っても、等々力辰は自分の新しい立場に慣れることができず、周りの人々の賛辞に対して少し居心地の悪さを感じ、唇を引き締めながら、まっすぐ前を向いて急ぎ足で上階のオフィスへと向かった。
一方、片隅では、林浩が等々力辰の去っていく方向を見つめ、その瞳には陰険な色が満ちていた。
林浩の傍らにいた数人の若手芸能人たちは思わず舌打ちし、集まって小声で話し合っていた。
「本当に世の中わからないものですね。三年も落ち目だった等々力辰が、突然ブレイクするなんて誰が予想したでしょう?」
「あの新しいマネージャーはやるじゃないですか!人を見る目が確かなだけでなく、市場の予測も的確ですよね!」
「まだ新人を受け持つのかな...」新人の中には彼の下で働きたいと考える者まで出てきた。
傍らで腕を組んでいた林浩は冷ややかに嘲笑い、「ふん、この件の発端は林宗央の死で、蘇我隆治が林宗央の遺志を継ぐために続編の撮影を思いついただけだろう。市場予測なんて関係ないさ!単なる運が良かっただけだ!」
横にいた新人の一人が弱々しくつぶやいた。「でも、あの動画のおかげが大きいと思います。アイデアが本当に素晴らしくて、一気に等々力さんを押し上げましたよね!」
新人は林浩の怒りを買うのを恐れて、もう一言言いたいことを飲み込んだ。
この芸能界では、運も実力の一部なのだ。
林浩は軽蔑した表情で言った。「なんて世間知らずなんだ!今このキャラクターを狙って何人が競争しているか知ってるのか?たかが一本の微博で話題になっただけの無名の役者如きが、本当に出演できると思ってるのか?」
林浩のこの言葉に、数人は同意した。今回の『ビックリドラゴン2』のキャスティングは、確かに競争が非常に激しい。