第368章 あなたの上司は魅力的すぎる

芸能マネージャーは時間が自由で、毎日会社にいる必要もないため、雨宮由衣は等々力辰のトレーニングスケジュールとトレーナー、栄養士の手配を済ませ、さらにネットでチームメンバーの募集を掲載した後、タクシーで庄司グループへ向かった。

秘書は彼女を社長室へと直接案内した。

社長と不思議な関係にあるこの方が今日は何か心配事があるようだと気づいた秘書は、探りを入れるように声をかけた。「雨宮様、今日は何かお悩みがあるようですが?」

雨宮由衣は眉間を押さえながら、否定せずに答えた。「ええ、悩んでいるんです...」

秘書は目を瞬かせて、「どうされたんですか?何かあったんですか?」

もしかして社長が...また機嫌を損ねたのかしら?

秘書は隣にいる美しい青年が物憂げにため息をつくのを聞いた。「あなたの上司が魅力的すぎるんです...」

秘書:「...」えっ?

なぜかその口調が...彼女が綺麗すぎて悩む彼氏のようなデジャヴを感じさせる...

社長室内。

雨宮由衣が入室した時、庄司輝弥はまだ少し仕事が残っており、パソコンの前で誰かとビデオ通話をしていた。

雨宮由衣は自然とソファに座り、待ちながら、ブルートゥースイヤホンをつけて流暢なドイツ語を話す男性の姿を、顎を支えながらぼんやりと眺めていた。

男性の背後には一面の窓があり、夕焼けに染まる空が、その冷たい表情と鮮やかなコントラストを成し、極めて美しい光景を作り出していた。

まして、その遠山のような眉、黒く深い瞳、薄い唇、完璧無欠で絶世の容姿。

ただそこに何気なく座っているだけなのに、その表情には人間味のない氷雪が覆い、一目見ただけで人生のすべての華やかさも目の前のこの絶世の美には及ばないと感じさせる...

雨宮由衣は苦労して視線を外し、崩壊寸前の様子で顔を手のひらに埋めた。

なんてことを...

まぶしすぎる...

これはあまりにもまぶしすぎる...

こんなにまぶしいと、どうやって連れて帰れるの?

連れて帰って両親に見せたら、心配で死にそうになるじゃない?

自業自得とはこのことね...

...

結局、雨宮由衣は悪趣味な高級レストランでのキャンドルディナーを選ばず、バーを予約した。