翌日の朝。
庄司輝弥が去った後、雨宮由衣は井上和馬に電話をかけた。
「もしもし、由衣様?」井上和馬は由衣がこんな早朝に電話をかけてきたことを不思議に思った。
「あなたの当主の体調はどうなの?」由衣は単刀直入に尋ねた。
「それは...」井上和馬は由衣が突然この質問をした意図が分からず、一瞬躊躇した。
「かなり悪いの?」由衣は眉をひそめた。
井上和馬は言葉を選びながら、「確かに楽観視できる状態ではありません...九様は若い頃に怪我をされ、もともと持病があり、それが十分に治療できていない上に、重度の不眠症も加わり、さらに状態は悪化しています。以前、我孫子名医が九様を診察した際、断言されたのですが...」
「何を断言したの?」
「このまま続けば、九様の体はもたなくなるだろうと...」井上和馬は最終的に事実を話すことにした。