第390章 1つの抱擁

朝食後、一行は準備を整え、出発することにした。

あっという間に二日が過ぎ、道中は極めて平穏で、何の異常もなかった。

今回は二手の人員が同行しており、一方は影で、もう一方は影流を筆頭に表立って行動していた。

実際、今回の準備は万全を期していた。まして現在の庄司輝弥の身分と地位を考えれば、命知らずでもない限り虎の威を借るようなまねはしないだろう。

そのため、庄司輝弥の今回の外出は、ごく普通の出張として扱われ、誰も問題が起こるとは思っていなかった。

雨宮由衣だけが、目的地に近づくにつれて、心臓が締め付けられるように感じていた。

本来なら、このような人員配置であれば危険など起こりえないはずだった。しかし、誰があのような連中が現れることを予想できただろうか……

車内にて。