第394章 手を出してはいけない存在

一瞬のうちに、全員がその場に立ち尽くし、方向を失った櫂のようだった。

「庄司様は一刻も早く総合的な検査と治療を受けなければなりません。一刻の猶予もありません!」医師は深刻な表情で言った。

「一番近い病院はどこですか?」井上和馬が尋ねた。

影流は歯を食いしばって、「こちらの医療設備では不十分です。ご主人様をそんな場所に送るわけにはいきません。ご主人様の健康が最優先です。国に帰りましょう!」

影流の言葉を聞いて、全員が互いに顔を見合わせ、沈黙に包まれた。

明日は交渉の日なのに、今帰国するのか?

しかし帰国しないとなると、今のBOSSの体調がこんな状態で……

雨宮由衣は窓の外の空を見つめ、心に暗雲が立ち込めた。

帰国?

おそらく……もう帰れないだろう……

皆が対策を協議している最中、突然、部下が慌てた様子で駆け込んできた——「隊長!大変です!」

「何が大変なんだ?うるさい」影流は不機嫌に怒鳴った。

「私たち……包囲されました!」部下は慌てた表情で言った。

影流は表情を変え、その部下の襟首を掴んだ。「何だと?どういう意味だ?15分前にホテル周辺を確認させたばかりだぞ!包囲されたなら、警戒している者が誰も気付かないはずがない!」

部下は唾を飲み込み、震える声で話し始めた。「私たちは町全体で包囲されています!この町の外周が完全に武装勢力に封鎖されました。敵意を持っているのは明らかで、私たちを狙っているようです!」

影流はその言葉を聞いて顔色が青ざめ、傍らの井上和馬も表情が一変した。「どうしてこんなことに?どこの勢力だ?よくもそんな大胆な?庄司家の者と知っていて、よくもこんなことを?」

部下は絶望的な表情で、どもりながら話し始めた。「部下たちが確認したところ、間違いなければ……殺人同盟の者たちです……」

「冗談じゃない!」影流と井上和馬の顔に同時に大きな恐怖の色が浮かんだ。

殺人同盟は各国の凶悪な無法者たちで構成され、裏社会での評判は最悪で、正邪両道の誰もが関わりたがらない。

また、彼らはどの組織や個人にも所属せず、依存もしない。

庄司家は今までこの組織と一切の接点がなかったのに、なぜ彼らは敵対してくるのか?目的は一体何なのか?

今、庄司輝弥は意識不明で、指揮を執る者がおらず、全員の頭の中は混乱していた。