第394章 手を出してはいけない存在

一瞬のうちに、全員がその場に立ち尽くし、方向を失った櫂のようだった。

「庄司様は一刻も早く総合的な検査と治療を受けなければなりません。一刻の猶予もありません!」医師は深刻な表情で言った。

「一番近い病院はどこですか?」井上和馬が尋ねた。

影流は歯を食いしばって、「こちらの医療設備では不十分です。ご主人様をそんな場所に送るわけにはいきません。ご主人様の健康が最優先です。国に帰りましょう!」

影流の言葉を聞いて、全員が互いに顔を見合わせ、沈黙に包まれた。

明日は交渉の日なのに、今帰国するのか?

しかし帰国しないとなると、今のBOSSの体調がこんな状態で……

雨宮由衣は窓の外の空を見つめ、心に暗雲が立ち込めた。

帰国?

おそらく……もう帰れないだろう……

皆が対策を協議している最中、突然、部下が慌てた様子で駆け込んできた——「隊長!大変です!」