第432章 彼を救った

井上和馬はそれらの書類を見つめ、急に安堵のため息をついた。心の中の大きな石が、ようやく下りたのだった。

当主は機密書類を由衣様に預けただけでなく、普段から何を話すにしても彼女を避けることはなかった。この点については、彼以外にも影流、秋山若葉、さらには多くの会社幹部全員が証明できることだった。

もし由衣様が何か情報を探ろうと思えば、それは本当に簡単なことで、こんなに面倒な回り道をする必要などなかったはずだ。

これでもう誰も由衣様を疑うことはないだろう……

案の定、庄司雅道と長老たちは、もう何も言えなくなった。

庄司雅貴は庄司輝弥がこのような機密書類を一人の女性に預けることに不満を感じていたが、雨宮由衣は今や庄司家の未来の当主夫人という立場にある。庄司輝弥が彼女に書類を預けることは、まったく非難の余地がなく、文句のつけようがなかったため、口を閉ざすしかなかった。