彼女が生まれ変わってから従順な態度を選んで以来、特に庄司輝弥の余命が半年と診断されてからは、庄司輝弥の性格は随分と穏やかになり、彼の本当の性格がどんなものだったのかほとんど忘れかけていた……
しかし今この瞬間、彼に関する恐ろしい記憶が一気に蘇ってきた……
略奪、暴虐、狂気……
病的なまでの支配欲……
庄司輝弥はもうずっとこんな風ではなかったのに、なぜ突然また感情を失ったのか?
今日は特に刺激になるようなことは何も起きていなかったはずで、むしろ雰囲気はずっと良好だったのに……
このような状態の庄司輝弥に対して、雨宮由衣は全く抵抗する勇気が出なかった。
さもなければ、これまでの努力が全て水の泡になってしまう可能性があった。
それに、彼を刺激せず逆らわないと決めた時から、このようなことは避けられないと覚悟していた。
「由衣……」
耳元に男の低い息遣いが響く。
普段の冷たさとは正反対の情欲に満ちた声。
雨宮由衣は緊張で極限まで張り詰めていた体が、その囁きに一瞬震えた。
「私の言葉を覚えているか?」
「な、何を……」雨宮由衣は茫然とした表情を浮かべた。
「彼を信じるな」
誰を信じるなと……?
雨宮由衣の頭の中は混沌としており、しばらくしてようやく庄司輝弥が何を言っているのか理解した。
彼の意味するところは、庄司夏の言葉を信じるなということ……
彼女は生まれ変わった後、元々は全く接点のなかった庄司夏が突然彼女に近づいてきた時、庄司輝弥が同じ言葉を言ったことを覚えていた。庄司夏を信じるなと。
雨宮由衣は理由を考えることなく、ただ本能的に庄司輝弥に安心感を覚えた。
根拠のない直感が彼女に告げていた……この世界で誰が彼女を害そうとしても、その人物が庄司輝弥であることはありえないと。
雨宮由衣は顔を上げて、「うん、私はあなただけを信じます」と言った。
少女の瞳には細かな雨が降り注ぐかのような潤いがあり、庄司輝弥の身に纏う殺気は少女の眼差しの中で少しずつ消えていき、瞳も次第に清明さを取り戻していった……
まるで極度に消耗する戦いを経験したかのように、庄司輝弥の表情の嵐は徐々に収まり、深い疲労へと変わっていった……
庄司輝弥がゆっくりと目を閉じるのを見て、雨宮由衣は長く息を吐いた。