第461章 超えるのは自分自身

南聖の一つ一つの動作、一つ一つの眼差しの演出が非常に的確で、話すスピードや間合いまでもがキャラクターの感情に完璧に合っていた。

以前のイケメン俳優たちの大げさな演技とは、まったくレベルが違う。

[わー!私たちの聖様、最高!超かっこいい!まさに私が思い描いていた林楽天そのもの!誰が等々力辰の林楽天は超えられないって言ったの?]

[原作ファンとして...確かに素晴らしい。以前のオーディション参加者たちよりずっと良かった!闇落ちした後の林楽天の雰囲気が出ている!束縛から解き放たれ、世俗を超越した感じ!]

[等々力辰が得をしすぎている気がする。準備時間が多いだけでなく、私たちの聖様の演技を真似できるなんて!あまりにも不公平じゃない?]

[これからどう演じるか見物だわ。もし聖様の演技をパクったら、徹底的に叩いてやる!]

……

南聖の演技に対して、副監督とプロデューサーは何度も頷き、今夜ずっと不機嫌だった蘇我隆治の表情も珍しく和らいだ。

等々力辰に向かう時、副監督の態度は明らかにそっけなくなり、適当に「等々力辰、始めていいよ!」と声をかけた。

南聖が5秒で役に入り込んだのに比べ、等々力辰は副監督が開始の合図を出した後も、自分の席に座ったままだった。

配信ルームですぐに批判の声が上がり始めた。

[何やってんだよ、役に入るの遅すぎ!さっきの南聖は5秒で入れたのに!]

[プロの俳優なら素早く役に入れるのは基本中の基本なのに、それすらできないなんて。しかも南聖の後で演じられるっていう有利な状況なのに!]

[この二人の差が大きすぎる!]

[一般視聴者として南聖を支持します!南聖が見せてくれる新しい林楽天に期待!]

[原作ファンとして、南聖の演技を見た後なら、確かに期待できそう!]

……

等々力辰は実際かなり不利な立場にいた。彼が元祖だからこそ、スタートラインが高く、ファンたちの要求も厳しかった。

彼は全てのオーディション参加者を超えなければならないだけでなく、自分自身をも超えなければならなかった。

およそ15秒が経過してから、等々力辰はようやく動き出した。

彼はゆっくりと顔を上げ、南聖の方向を見つめた。その眼差しには邪悪さも冷たさもなく、むしろ親しみと懐かしさが漂っていた。