第520章 勝てるはずがない

最終的な処分は、蘇我保司は法執行機関で鞭打ちの罰を受け、影流は職を解かれることとなった。

庄司輝弥が去った後、客間の雰囲気は重苦しくなった。

十一は指輪を手に持ち、軽く咳払いをして話そうとしたところ、影流が冷たい表情で口を開いた。「調子に乗るなよ。この指輪は、すぐに取り返してやる!」

影流はそう言い残すと、すぐに立ち去った。

蘇我保司は十一を一瞥すると、急いで後を追った。

十一は言おうとしていた言葉を飲み込み、気まずそうにその場に立ち尽くすしかなかった。

十一と親しい暗殺衛士の一人が、不快そうに口を開いた。「あいつ、生意気すぎるだろ!」

「何様のつもりだよ。自分のミスで職を失ったくせに、まるで隊長が彼の地位を奪ったみたいな言い方して!」

十一はため息をつき、諦めたような表情を浮かべた。「まあいいさ、確かに俺の実力不足だし」

彼の腕前は悪くなかったが、影流には一度も勝てたことがなかった。

この総隊長の地位も、影流が過ちを犯したから自分のものになっただけだ。

次の総隊長審査まで数ヶ月しかない。そんな短い期間で、どうやって影流に勝てるというのか?

この総隊長の座も、長くは務まらないだろう……

……

雨宮由衣は庄司輝弥に二杯の酔い止め薬を飲まされた後、やっと外出を許された。

彼女は江川麗子と風間川治との待ち合わせをしていた。

出かける前に、以前橋本羽からもらったサイン入りアルバムも一緒に持って行った。

これまで忙しすぎて、江川麗子に渡す時間がなかったのだ。

当時、友達にファンがいると橋本羽に話したら、彼は直接10枚くれた。

もしかしたら……風間川治が本当に麗子を裏切るようなことをしていたら……

アイドルのグッズで少しは気を紛らわせられるかもしれない……

でも、やはりこの件には何か誤解があるはずだと思っていた。

大学街近くのレストランで、雨宮由衣は憔悴した表情の江川麗子と向かい合って座っていた。

「麗子、昨夜バーで何か問題なかった?」雨宮由衣は心配そうに尋ねた。

江川麗子は首を振った。「私、飲みすぎちゃって。あなたが来てくれて、帰るように言ってくれたのは覚えてるけど……何かあったの?昨夜、あなたが送ってくれたの?」

江川麗子もその時は酔っていて、その後何が起こったのか分からなかった。