第519章 権限剥奪

昨夜、紅月に集まった者たちは全て庄司輝弥の腹心で、その時起きた全ての出来事について口止めされていた。

雨宮由衣については、酔っ払って何も覚えていなかったため、本当に転んだと思い込み、全身の痛みもそのせいだと考えていた。確かに違和感を感じる部分も多かったが、井上和馬たちが口を揃えて言うため、疑う余地もなかった。

「あっ、大変！嫣然は？嫣然はどうなった？」雨宮由衣が突然思い出した。

「井上和馬が人を遣って送り返した」庄司輝弥が答えた。

「怪我はなかった？」

「ない」

「よかった、よかった……」雨宮由衣はようやく安堵の息をついた。

雨宮由衣は言いながら、影流と蘇我保司の方向を一瞥したが、表情に変化はなかった。

見殺しにしただけのことだ。前世で庄司家で受けた仕打ちに比べれば、大したことではない。

雨宮由衣は視線を戻し、「邪魔はしないわ。続けて……」

庄司輝弥がこの二人をどう処分するかは、もう関心がなかった。

今の彼女にとって、より重要なのは自分の実力を高めることだった。

昨夜のような出来事を、二度と起こしたくなかった。

転生してから、彼女は必死に自分を変え、知識を学んできたが、唯一、自分の身体能力を強化することを考えていなかった。

「十一先生、また後で」雨宮由衣は十一に挨拶をした。

「はい……はい……」十一は軽く咳をして、曖昧に返事をした。

雨宮由衣が去った後、客間は再び静寂に包まれた。

影流は黙って頭を下げたまま立っていた。

次は、蘇我保司と影流への処分が残っている。

一瞬にして、全員の視線が庄司輝弥に注がれ、彼の判断を待った。

確かに、雨宮様は保護など必要ないかもしれないが、影流と蘇我保司の責任は免れない。特に影流は。

影流の雨宮由衣に対する偏見は、その場にいる全員が知るところで、今回は確かにやり過ぎだった。

しばらくして、部屋に男の冷たい声が響いた。「本日より、影流は総隊長の全ての職務を解かれ、十一が代行する」

庄司輝弥の最初の言葉を聞いた時、影流は突然顔を上げ、信じられない様子だった。他の者たちも顔を見合わせ、息を飲んだ。

まさか……直接権限を剥奪するとは……

この処罰は数百回の鞭打ちよりも重い。

さらに驚いたのは十一だった。