第497章 争奪

傍らにいた椎名勉は、秋山若葉がこのように低姿勢で何も分からない令嬢に話しかけているのを見て、顔色が一気に曇った。

中年の男性は我慢できずに口を開いた。「いつから我々の業務報告が部外者の機嫌を伺わなければならなくなったのですか?お嬢さん、あなたには九様にお会いする我々を止める権利はないはずです!」

その時、後ろにいた井上和馬が適切なタイミングで軽く咳払いをし、説明を始めた。「椎名社長、若葉お嬢様、確かに九様が由衣様にこちらの対応を任せられたのです。お二人のご用件は直接由衣様にお伝えいただければ、書類も由衣様から九様にお渡しすることになっています!」

井上和馬のその言葉を聞いて、椎名勉は言葉に詰まり、秋山若葉もしばし沈黙した。

雨宮由衣は物憂げにあくびをし、すでに苛立ちの表情を見せていた。「他に何かご質問は?」