新津香織は真っ赤なイブニングドレスを纏い、華やかに舞台へと歩み出た。
司会者は手順通りに新津香織の受賞スピーチを促した。「この結果は本当に意外でしたね!香織さん、申し訳ありませんがこう言わせていただきますが、ノミネートされた方々の中で、あなたが最も期待されていなかったことはご存知でしょう!今回の受賞について、何かお話しいただけますか?」
新津香織は客席に目を走らせ、深く息を吸ってから口を開いた。「この結果については、私自身も驚いています。正直に申し上げますと、ほんの数秒前まで、もう諦めようかと考えていました。何をしても認められることはないだろうと。まるで私を批判することが流行りのように、真理のようになってしまっていましたから。」
新津香織は外見上、そういったことを気にしていないように見せていたが、それは人々に彼女もまたそれらを気にかけていることを忘れさせていた。誰しも称賛や認めてもらいたいと思うものだ。
新津香織の表情に苦い諦めの色が浮かび、さらに続けた。「誰もが知っているように、この芸能界では、世論が是非を逆転させ、芸能人の生死を決めることができます。
私は思いました。どうせ批判されるなら話題性になる、私はお金を稼ぎ続ければいい、演技力を磨く必要なんてない、自分を証明する必要なんてないと。」
新津香織の言葉に、客席は一瞬静まり返った。誰もが彼女の言葉が正しいことを知っていたが、芸能界全体で、おそらく新津香織だけがこのような発言を公の場でできる人物だった。
新津香織は少し感動した様子で続けた。「だからこそ、本当に感謝しています。金蘭賞のような、世論やあらゆる外部要因に影響されない賞があることに。このように自分を証明できる機会を与えていただいたことに。
同時に、心から願っています。皆様が客観的な視点で、もう一度この作品を、そして私という人間を見直してくださることを。」
新津香織の言葉が終わると同時に、会場は大きな拍手に包まれた。
橋本羽もほっと胸をなでおろした。新津香織が最後にうまく話をまとめてくれて、しかも非常に良い形で締めくくったからだ。
雨宮由衣は知っていた。前世で新津香織のこのスピーチが『静かな子』に驚異的な興行収入をもたらし、その年の興行収入記録を塗り替えたことを。