岡本月見の声に続いて、会場は一瞬不気味な静寂に包まれた。
誰もが聞き間違えたと思った。
今、岡本月見が発表した名前は何だったのか?
新津……新津香織?
菊池美桜ではなく、新津香織!そんなことがあり得るのか?
前列で既に立ち上がっていた菊池美桜の完璧なメイクの顔が、突然何の前触れもなく凍りついた。喜びに満ちていた瞳は信じられない表情に変わった。
そして菊池美桜以上に驚いていたのは、新津香織本人だった。
数多の非難を浴びても動じることのない新津香織が、珍しく困惑と戸惑いの表情を見せた。
「香織姉!香織姉……」
結局、橋本羽に促されて初めて我に返った新津香織は、まず橋本羽の隣にいる雨宮白の方を見た。
彼の予測が、全て的中していた……
若者の輝かしくも確信に満ちた瞳と目が合い、新津香織の心臓が制御不能に一瞬揺らいだ。
なぜ気づかなかったのだろう。雨宮白が彼女が主演女優賞を取ると言った時、最初から最後まで冗談めいた表情を一切見せなかったことに。
彼は本当に彼女がこの賞を取れると信じていた……
この瞬間、静まり返っていた会場は一気に音を取り戻し、会場は拍手喝采に包まれた。『静かな子』の監督チーム、そしてユニバーサルエンターテインメントの芸能人たちの多くが、興奮して新津香織のもとへ駆け寄り、抱擁して祝福した。
菊池美桜は隣に座っていた林夏音に引っ張られてようやく我に返り、極めて硬い表情で座り直した。
しかし、先ほど彼女が早々に立ち上がった一幕は、既にカメラに収められていた。
今回の金蘭賞の助演女優賞、助演男優賞、主演男優賞は全て帝星エンターテインメントが獲得しており、もし帝星が主演女優賞まで獲得していたら、新人賞一つしか獲得できなかったユニバーサルエンターテインメントは本当に面目を失うところだった。
誰も予想していなかったが、最後の瞬間にこのような大きな逆転が起こり、誰も予想していなかったダークホースが現れ、主演女優賞の受賞者がユニバーサルエンターテインメントの新津香織となり、全員を驚かせた。
雨宮望美はいつもの優雅で落ち着いた表情に明らかな戸惑いの色を浮かべたが、それでも無理に大人な態度で微笑みながら拍手を送っていた。彼女の隣の黒田悦男の表情は真っ黒に沈んでいた。