「彼女を脅したの?」と橋本羽が尋ねた。
雨宮由衣は眉を上げて、「どう思う?」
橋本羽は何も言わなかったが、心の中では雨宮由衣が単に人を脅かしただけだと思っていた。
中間に歌と踊りの出し物が入った後、今夜のクライマックスである主演女優賞の発表となった。
スライドショーには、ノミネートされた作品が次々と映し出された。
北条実里『パリからの手紙』
菊池美桜『私の母』
沢田寧寧『深宮』
新津香織『静かな子』
……
男女二人の司会者が掛け合いを続けていた。
男性:「まあ!本当にドキドキしますね!今回の金蘭賞主演女優賞は一体誰の手に渡るのでしょうか?」
女性:「もう引っ張らないで、早く発表してください!皆さんがとても待ち遠しそうですよ!」
男性:「あなたが誰だと思うか当ててみませんか?」
女性:「それは難しすぎますよ。私には分かりません。ヒントをいただけませんか?」
二人の司会者は結果を言わずにただ話し続け、客席の全員が首を伸ばして待っていたが、これこそが主催者側の狙いだった。
ステージ上の大画面は四分割され、四人のノミネート者それぞれの表情が観客の目の前に映し出された。
十分に期待感が高まったところで、男性司会者がようやく口を開いた。「分かりました。美女のお願いですから、ヒントを出しましょう。受賞者の名前は……三文字です!」
女性司会者はすぐさま驚いた声を上げた。「わあ、それは大きなヒントですね!ということは、受賞者は菊池美桜さんか新津香織さんのどちらかということですね?」
司会者の言葉に、客席からどよめきが起こり、全員が新津香織と菊池美桜の方を見た。
このヒントは大きいどころか、ほとんど答えを言っているようなものだった。
新津香織の表情が一瞬暗くなった。誰が受賞するにしても、宿敵の菊池美桜だけは避けたかった。
しかし、もう結果は決まっているのだから、後で菊池美桜がどんな風に彼女を嘲笑うか想像するまでもなかった。
前列に座る菊池美桜、雨宮望美、黒田悦男ら帝星エンターテインメントの芸能人たちは、みな笑みを浮かべ、特に菊池美桜は喜びを隠しきれない様子だった。
周りの芸能人たちはもう祝福の言葉を掛け始めていた。
林夏音は微笑みながら祝福した。「美桜さん、おめでとうございます!」