第513話 完全に制御不能

影流は低く唸り声を上げながら、必死に立ち上がった。同時に、蘇我保司も油断することなく、二人で一緒に攻撃を仕掛けた。

彼らは何が起きているのか分からなかったが、一つだけ確かなことがあった。今、退くようなことをすれば、雨宮由衣の恐ろしいまでの戦闘力で、次の瞬間には命を落とすことになる。戦えば……

おそらく、少しは長く生きられるかもしれない……

バーの中では、逃げる者は逃げ、隠れる者は隠れ、残された者たちはその場に立ち尽くしたまま、少女による完全な一方的な虐待を呆然と見つめていた……

二人の男はほとんど血まみれになっており、特に少し強そうに見えた方は……

そのとき、入り口から訓練された足音が聞こえてきた。

十一と井上和馬が部下を連れて到着したとき、バーの中は悲鳴が響き渡り、護衛たちが床に倒れていた。

蘇我保司は息も絶え絶えに床に横たわり、影流は全身血まみれで、か細い影に蹴り飛ばされ、地面に倒れ込んだまま動かなかった……

一体誰だ！蘇我保司と影流をこんな目に遭わせるとは？

その影は猛スピードで動き、極限まで達した殺意を纏い、すでに抵抗する力を完全に失った影流に向かってさらに攻撃を仕掛けようとしていた……

「影流！！！」

この光景を目にした十一は急に表情を変え、考える間もなく、すぐさま身を翻してその者の殺しの一撃を必死に阻止した。

十一の後ろにいた暗殺衛士たちは、影流と蘇我保司がこのような状態にされているのを見て、一瞬にして全員が大敵に臨むかのように緊張し、すぐさま突っ込んでいった。

「お前は何者だ？」

十一の腕はほとんど痺れていたが、鋭い眼差しでそのか細い影を見つめた。

しかし、次の瞬間、少女の顔を見て、十一は完全に呆然となった。「結…結衣様……どうして……」

十一が反応する間もなく、肩に激痛が走り、相手の雨あられのような攻撃に必死に対応するしかなかった。

同時に、少し離れた場所にいた井上和馬も、十一と戦っている女性が誰なのかを認識した。

「結衣様？これは……」

一体何が起きているんだ？

なぜ結衣様が？

「結衣様！」井上和馬は焦って叫んだが、相手は彼の声が全く聞こえていないかのように、むしろ殺意の気配がより濃くなっていった。