第514章 喧嘩禁止

十一もまた絶望と恐怖でそのことに気づいていた。

あんなに可愛らしい少女が突然、恐ろしい殺戮の神に変貌するなんて、とても信じられなかった。

今回はB国での任務のような演技ではなかった。

誰もが夢を見ているかのような表情で、普段は彼らの前で甘えん坊だった少女が、目の前のこの人物と同一人物だとは到底信じられなかった。

雨宮由衣の致命的な一撃が下される直前、井上和馬は急いで十一の前に立ちはだかった。「由衣様！やめてください！」

雨宮由衣は足を止め、虚ろな目で井上和馬をじっと見つめ、一時的に攻撃を止めた。

井上和馬は少し安堵の息をつき、「由衣...」

しかし、言葉が口から出る前に、一蹴りで吹き飛ばされた。

井上和馬は影流の近くに激しく叩きつけられた。

「井上！くそっ...」少女が冷たい眼差しで自分を見つめ、一歩一歩近づいてくるのを見て、十一は全身が氷の穴に浸かったかのように冷たくなった。

「シュッ」少女は武器を必要としなかった。彼女の四肢、彼女の体こそが最も鋭い武器だった。

手刀が刃物のように襲いかかってきて、十一は歯を食いしばり、なんとか立ち上がって、もう一度その恐ろしい一撃を受け止めた。

二人は再び戦いに巻き込まれた...

厳密に言えば、雨宮由衣が一方的に十一を攻撃し、十一は防御するのが精一杯だった。

瀕死の状態での爆発的な力も長くは続かず、十一は次第に隙だらけになり、もはや持ちこたえられなくなった。一方で、少女の殺意はますます強くなり、致命的な一撃が彼の心臓めがけて直接襲いかかってきた...

十一はよろめきながらその場に立ち、絶望的に目を閉じた...

「由衣様！」遠くから井上和馬が慌てふためいて叫んだ。

「十一！」蘇我保司と影流も表情を一変させた。

その時、突然斜めから破空音が響き、巨大な威圧が少女の殺意とぶつかり合った。

時間がその瞬間止まったかのようだった。

十一が予想していた骨の砕ける感覚は訪れなかった。

冷や汗を流しながら目を開けると、いつの間にか現れた背の高い細身の人影が逆光の中に立ち、手で少女の手首をしっかりと掴み、その致命的な一撃を防いでいた。

庄司輝弥の全身は極寒の地の風雪に包まれているかのようで、倒れている部下たちを一瞥した後、目の前の少女を見つめ、その表情は極限まで冷たくなっていた。