第515章 変わったのは私ではない

自分の主人が暴走した殺戮の神を抱きしめているのを目の当たりにして、井上和馬は魂が抜け出るほど驚いた。

「九、九様……」

危険だ!

しかし、雨宮由衣は怒りに満ちた男の顔を見つめ、まるで地獄から人間界に戻ってきたかのように、瞳の中の殺意と残虐性が潮のように引いていくのが見えた。

「九」まるで自分が安全だと分かったかのように、少女は身体から恐ろしいオーラを消し去り、戦闘状態にあった体は激しい消耗により突然力が抜けた。

庄司輝弥の表情は氷のように冷たかったが、少女を抱き上げる動作は極めて優しかった。

「井上和馬、あの少女を送り返せ。それと、今夜の出来事は全て封鎖しろ」庄司輝弥は一言残すと、雨宮由衣を抱えて足早に立ち去った。

雨宮由衣がまるで無害な子猫のように主人に簡単に抱き去られるのを見て、皆はしばらく呆然としていた。しばらくして、全員が生き残ったかのように大きく息をついた。