その言葉を聞いて、雨宮由衣の心臓が高鳴り、おずおずと尋ねた。「誰なの……?」
「あなたの友達、庄司九よ」と橋本羽が答えた。
雨宮由衣はそれを聞いて呆然とした。橋本羽が庄司輝弥だと気づいたの?それなら彼女も危険じゃない?
でも、庄司輝弥の雰囲気があまりにも特別だから、一目で分かるのも当然か……
電話の向こうで、橋本羽は続けた。「彼は彼女と一緒に来てたわ。私たちの後ろの席に座ってたけど、その時は人が多くて挨拶できなかったの」
雨宮由衣は橋本羽の口調から、自分のことは気づかれていないようだと安堵して、「なんて偶然!」と言った。
「彼、彼女とすごくラブラブだったわ。二人の甘い空気に包まれて、いつも冷たそうな友達があんなに情熱的になれるなんて意外だったわ!」と橋本羽は驚いた様子で言った。
えっ?庄司輝弥が彼女に対して……情熱的?
雨宮由衣は口角を引きつらせながら、隣の無表情な氷山男を見て、真面目に言った。「それはきっと彼女があまりにも可愛いからでしょう!」
橋本羽は笑って、「そうかもね。英雄も美人には弱いってことね!私、最初は……あなたたち二人がそういう関係かと思ってたわ!」
雨宮由衣は咳き込んで、再度強調した。「考えすぎよ。私たち、たまにBLごっこするだけ!」
「そうよね、私もそう思った」橋本羽は言って、「じゃあ、これくらいにしておくわ。また会いましょう。アパートに戻る時は前もって教えてね。チケットを渡すから」
「はい、ありがとう。香織姉にもよろしく伝えてね!」雨宮由衣はもう遠慮しなかった。
電話を切った後、雨宮由衣は安堵して胸をなでおろした。「よかった、よかった。あの時すぐに対応できて。橋本羽はあなたしか見えなくて、私のことは気づかなかったし、おまけに私たちの同性愛の噂も晴れたわ!」
傍らの庄司輝弥は最後の一言を聞いて、かすかに表情を変えた。
明らかに、ある人物はこの噂が晴れることを望んでいなかったようだ……
……
二日後、十一の任務が完了し、怪我も少し回復したため、雨宮由衣は正式に十一との訓練を開始した。
今夜は金蘭賞の授賞式に行かなければならない。
庭で、庄司輝弥は少し離れた木陰で牛乳を飲んでいた。傍らには居眠りをしている白虎がいた。
彼の毎日のコーヒーや濃い茶は、雨宮由衣に強制的に牛乳に変えられていた。