雨宮由衣は静かにステージの下に立ち、芸能界のスター軍団を率いて、今まさに絶頂期にある雨宮望美と黒田悦男を見つめていた。
現在の雨宮グループは、ユニバーサルや他の企業からの圧力を受けているものの、依然として芸能界の最大手であり、今回の授賞式で多くの賞を獲得するのは必然だった。
先日、帝星側は多くのプレスリリースを出し、今回の授賞式を席巻すると宣言していた。
しかし、主演男優賞と主演女優賞の両方を独占しようとする野望は、おそらく失望に終わるだろう。
雨宮由衣はレッドカーペットを歩く必要がなく、少し離れた場所から様子を見た後、直接授賞式会場へと向かった。
橋本羽は忙しすぎて、先ほど助手に入場券を急いで届けてもらったばかりだった。
雨宮由衣は入場券を取り出し、座席番号を確認しようとしたが、番号を見た瞬間、一瞬戸惑った。
えっ、なんでこんなに前の席?何か間違いがあるんじゃない?
雨宮由衣は何度も確認したが、やはり同じ座席番号だったので、橋本羽の助手に電話をかけて確認しようとした。
しかし、助手の電話は通話中で、つながらなかった。
雨宮由衣は困ってしまった。このような場では、勝手に座席を変えることはできないからだ。
助手の電話がずっとつながらず、雨宮由衣は仕方なく後ろの隅で待つしかなかった。
頭を悩ませていた時、前方から聞き覚えのある足音が聞こえ、そして親しげに肩を抱かれた。「雨宮白、ここで何してるの?」
白いシャネルの高級オーダーメイドスーツを着て、いつもより一層輝いている橋本羽が、いつの間にかやってきていた。
来た人を見て、雨宮由衣は一瞬驚いた。「羽……」
「ずっとここに立ってるの見てたけど、二宮から入場券もらってないの?」と橋本羽は尋ねた。
「もらったけど、座席番号がおかしいみたい。前すぎない?」と雨宮由衣は答えた。
橋本羽は近づいて一目見て、すぐに言った。「大丈夫、この番号で合ってる。僕の隣だよ。行こう!」
そう言いながら、雨宮由衣を抱きかかえるように前の席へと連れて行った。
「あなたの隣?」雨宮由衣はさらに驚いた。
「大丈夫だよ。副監督が来られなくなったから、僕と香織姉でその席を君にあげることにしたんだ。問題ないから!」
橋本羽がそう言うのを聞いて、雨宮由衣はようやく安心した。