じめじめとした洞窟の中。
薄い日差しが岩の隙間から差し込み、苔むした岩の上に落ちていた。
ブーンブーン!
一匹の大胆不敵な吸血蚊が羽を振るわせながら、堂々と飛んでいた。
それが、どれほど冷酷な狩人の前にいるかも知らずに。
シュッ!
二又に分かれた舌が素早く飛び出し、瞬く間にその美味しそうな蚊を飲み込んだ。
それは若い雷屬性の魔爆蛙だった。
残念ながら、それもまた、どれほど狡猾で忍耐強い狩人の前にいるかを知らなかった——
ヒュッ!
突然の風切り音が響いた。
特製の蛙捕り網が一瞬のうちに飛来し、魔爆蛙をその場に押さえ込んだ。どれほど暴れても無駄だった。
長い間待ち伏せていた狩人は、熟練した手つきで少し錆びた短刀を取り出し、容赦なく魔爆蛙の命を絶った。
……
「魔爆蛙を1匹倒した。累計撃破数164250匹。マイルストーン-雲臺山の蛙狩人の新記録を更新」
「XPを1ポイント獲得」
「魔法耐性が微かに上昇」
「魔法耐性が100%に到達(これ以上上昇不可)」
「第一の罪の印を完遂。特技:十年一劍を獲得」
……
「十年か。」
「やっと少しは強くなれた。」
洞窟の中で、ロジャーは静かにつぶやいた。
しかし、その感傷に長く浸ることはなかった。手慣れた様子で魔爆蛙の死骸を片付けると、記憶の中の小道を辿りながら、素早く慎重に洞窟地帯から退出した。
この暗く湿った場所で、彼は食物連鎖の頂点ではない。魔爆蛙ハンターである彼も、他の魔物の目には、ただの少し強い獲物でしかないかもしれない。
十分後。雲臺山の麓。
青々とした草が生い茂る石畳の道を歩きながら。
ロジャーは思わず目を細めて真昼の太陽を見上げた——記憶の中と同じように眩しかった。
「こんな熱い日差しを見るのは、どれくらいぶりだろう?」
彼の心に何とも言えない感動が込み上げてきた。
十年か!
転移してからのこの十年間、彼は毎日魔爆蛙と付き合ってきた:
夜明け前に暗闇の中を起き出し、山に入って蛙を捕まえ;
夕暮れ時に月を戴いて帰り、家で眠る。
長期の洞窟生活で「暗視」を獲得した。
しかしその代わり、久しぶりに日光を浴びると、システムから「強光耐性低下」の通知が来た。
これは軽いめまいと一時的な視力低下を意味する。
幸い今日は全ての仕事を終えて、帰り道だった。
ロジャーの認識では、この下山路に危険はないはずだった。
「どんな時も油断はできない。」
「この世界は危険すぎる……」
そう考えながら、ロジャーは静かに隱密俠の職業特技「望氣術」を発動した。
「望氣術(1環特技):凶を避け吉を招く、敵味方を識別可能」
「発動中は毎分2ポイントの体力と2ポイントの精力を消費」
……
もし神様が事前に、あの奇妙な職業モジュールをダウンロードすると転移することになると教えてくれていたら、ロジャーは絶対に手を出さなかっただろう。
しかし、もしもは存在しない。
ロジャーは生粋のネットゲーマーで、幼い頃からゲームを始め、二十年以上プレイしてきた。
転移する直前、彼はあるマイナーなDND系ゲームをプレイしていた。
「下手くそな重症ゲーマー」の典型として、ロジャーは当然のように第一関門で詰まっていた。
丸一週間、彼は関門ボス——狡猾な魔導領主と死闘を繰り広げていた。
最終的な結果は九十九回の完敗。
そのため、彼は不正手段に頼らざるを得なかった。
チートツールを探してネットを巡っていた時、あるユーザー作成のアップロードされた職業モジュールを見つけた。
それは「隱密俠」という職業だった。
ロジャーは一目で気に入った。
「隱密俠」は中国古代の俠客と西洋ファンタジーのレンジャーを基に設計された格好いい職業だった。
最も重要なのは、この職業は高い魔法抵抗を持っていたことだ。
制作者はコメント欄で、魔法使いが大嫌いだと述べていた。
隱密俠という職業は、まさに魔法使いを倒すために設計されたものだった。
たまたま魔導領主に一週間虐められていたロジャーにとって、この職業との出会いは願ってもない朗報だった。
彼は急いでダウンロードボタンを押した。
そして転移した。
……
「基本情報:ロジャー 24歳人類男性 職業隱密俠LV5」
「能力値:力9 體力9 敏捷性11 知覚12 知力11 魅力9」
「特技:堅實/望氣術/市中隱遁/燕のごとき軽身/十年一劍(新)」
「スキル(生活):採集術49 草薬49 登攀49 剝皮術25 野外生存術20……」
「スキル(戦闘):隱密49 奇襲49 隱密武器熟練49 兎のごとき俊足49 動物調教49……」
「特殊:罪の印/誅殺令」
「耐性:魔法耐性100%……」
……
一時間後。
ロジャーは自宅の小屋の寝台に心地よく横たわりながら、ステータス画面を確認していた。
「やっと第一の罪の印を手に入れた。」
「魔法耐性は最大まで上がったし、新しい特技の性能も悪くない。」
……
「十年一劍(1環特技):戦闘時、最初の3回の攻撃に四重の'蓄勢'効果が付与される」
「蓄勢:技の威力が100%上昇/重ごと」
……
ロジャーの顔に満足げな笑みが浮かんだ。
これは彼の十年の苦労への肯定だった。
十年前、彼は「ミストラ」という名の星球に転移した。
何も持たず、ただ「隱密俠」という職業モジュールだけを持っていた。
町の老人からこの世界の概要を聞いた後、彼は自分に言い聞かせた:
無茶はせず、堅実に行こう!
主に二つの理由があった:
第一に、ロジャーは自分のことをよく分かっていたからだ。
この世界はゲーム世界に似ている部分があった。
そして彼は、ゲームの分野では間違いなく下手くそだということを、はっきりと認識していた!
転移して職業テンプレートを得たからといって、下手くそが上級者になれるわけがない。
転移したばかりで暴れまわって大暴れするような展開は、他人に任せた方がいい。
下手な者は慎重に。
じっくりと育成し、切り札を溜めることこそが王道だ。
だから誰かに冒険に誘われるたびに、ロジャーの返事はいつも:
「今度にしよう。」
「行かないよ。」
「俺はそんなに強くないし……」
……
第二に、この世界は非常に危険だからだ!
桐麻町で広く伝わる創世神話によると、この世界は九つの星球で構成されているという。
その中で最も小さいのが、ロジャーのいる「ミストラ」だ。
ミストラにはかつて輝かしい文明があったが、それはもう過去の雲煙となってしまった。
伝説では、地上の生き物が天神様の怒りを買ったのだという。
激怒した天神様は十九環魔法でミストラを三日三晩にわたって爆撃した。
高層建築は平地と化し。
良田は砂漠となった。
さらに恐ろしいことに。
大災厄から生き残った人々は恐怖の中で気付いた。十九環魔法の大爆発の後遺症がミストラの上空に漂い続けていることに——大量の消えない野性の魔力が呪いとなっていた。
魔力の放射の下で、ますます多くの人や獣が異形の魔物へと変異していった。
もちろん、魔力の濃密化から恩恵を受けた者もいた。
彼らこそが、ミストラの廃土時代に新たに台頭してきた冒険者たちだ。
しかし、影の中で増殖する恐怖に比べれば、人類はあまりにも小さな存在だった。
十年前にロジャーと行動を共にした冒険者たちのうち、今も桐麻町で活動している者はごくわずかだ。
そのうち約十分の一は、より魔力豊度の高い南方へ機会を求めて旅立った。
残りの者たちについて、ロジャーは思い出したくなかった。
ただ安らかに眠ることを願うばかりだ。
……
今となっては、ロジャーの選択は間違いなく正しかった。
日々の苦労を重ねることで、彼はついに少しだけ強くなり、本当に桐麻町を出る力を手に入れた。
もちろん、彼が初心者の村に十年も留まっていたのには別の理由もある。
それは「隱密俠」という職業に関係している:
隱密俠として、ロジャーは特別優れた能力値を持っているわけではない。
彼の六大能力はすべてミストラの一般人(平均9ポイント)よりほんの少し高いだけで、冒険者たちと比べるとやや劣っている。
隱密俠のスキルセットは平凡で、特技もちょっとした特色があるだけだ。
唯一、特殊能力だけが目を引く。
「隱密俠」は初期状態で二つの特殊能力を持っており、それぞれ「罪の印」と「誅殺令」だ。
ロジャーを魔爆蛙の天敵にしたのは、前者だった。
……
「罪の印:特定の種類の魔物に罪の印を付与することができる。その種の魔物を倒し続けることで、追加の能力値ボーナスを獲得できる」
……
例えば魔爆蛙からの能力値ボーナスは魔法耐性の上昇だった。
そして魔物を倒す過程で、罪の印はプログレスバーに蓄積されていく。
プログレスバーが満タンになった時。
「隱密俠」は報酬として特殊な特技を一つ獲得する。
それに応じて、以後その種の魔物から能力値を得ることはできなくなる。
俗に「卒業」と呼ばれる。
この特殊能力を得た後、ロジャーは桐麻町周辺の一般的な小型モンスターで試してみた:
黃風兎を倒して、聴覚を向上させる。
木魔の森を倒して、X能力を向上させる。
小地靈を倒して、土屬性との親和性を向上させる。
……
正直なところ、どれもあまり役に立たない能力値だった。
ある時まで。
薬草採りの際に、たまたま若くて無知な魔爆蛙に印を付けた。
雲臺山の蛙狩人の物語が始まったのだ……
隱密職の初期魔法耐性は40%だった。
十年の蛙狩人生活で、ロジャーは魔法耐性を100%まで上げた——
もし彼がいつか不注意で法術師さまキラーになったとしたら、それは164250匹の魔爆蛙の責任だ。
……
今、最初の罪の印を完成させたロジャーは心が軽くなった。
この十年の積み重ねで、もう桐麻町を出られるだけの力がついたことを知っていた。
彼はベッドに横たわり、「望氣術」で自分の運勢を占った。
占いの結果は。
明日は大吉、旅立ちに適し、敵を倒すにも適している。
……
翌朝。
桐麻町領主府。
ロジャーは一人、ふわりと現れ、三年間掲げられていた懸賞令を引きはがした。
「屍羅妖、俺が来た。」
彼が颯爽と立ち去ろうとしたその時、二人の大柄な衛兵に行く手を阻まれた。
……