069 荒々しいグローブ

アボさんの顔色が冷たくなった。

次の瞬間、彼は横滑りし、左足を高く上げ、鋭い横蹴りで青銅の剣の突きを弾き飛ばした!

「なるほど、武術家の敗北者か」

アボさんは少し失望し、明らかな嫌悪感を露わにした:

「お前に拳を使う資格などない!」

言葉と共に。

彼の左手が震え、精巧な指輪がゆっくりと姿を現した。

それは自らを透明化できる指輪だった!

ロジャーは不味いと察し、後ろに跳んで距離を取ろうとした。

しかし、もう遅かった。

短い呪文が急いで唱えられた。

指輪から十数本の太くて丈夫な蜘蛛の糸が放たれ、青銅の剣をしっかりと縛り付けた。

黑拳師範が強く引っ張った。

ロジャーは手を放すしかなく、青銅の剣がアボさんに奪われてしまった!

「ふん」

「くずめ」

アボさんは再び拳を握りしめ、大きく一歩踏み出して、拳を振り回してきた!

ロジャーの全身の毛が逆立った。

雲煙の歩法を発動!

危うくアボさんの必殺の一撃を避けた。

相手は言葉もなく。

再び拳を振り回してきた。

その時。

ロジャーはただ後退を余儀なくされた!

「なんて速い拳だ!」

「なんて重い手だ!」

アボさんの前で、ロジャーの屬性の劣勢が極限まで露呈された!

どんなに優れた技巧も、屬性があってこそ完璧に発揮できる。

地下室の空間は彼に接近戦を強いた。

そして接近戦では。

ロジャーより何倍も強靭な黑拳師範が完全に優位に立っていた!

幸いにもロジャーの回避値は低くなかった。

雲煙の歩法の加護の下。

彼は狼狽えながら逃げ回りつつ、時折反撃することができた。

しかし彼の拳がアボさんの体に当たっても、まったく効果がないように感じた。

相手がわざと打たせているのではないかとさえ疑った。

目的は自分の体力を消耗させることだ!

「臆病者め!」

アボさんは突然怒鳴った:

「男なら拳で勝負しろ!」

言葉が終わるや否や。

彼の着ていたタンクトップが裂け、爆発的な筋肉の輪郭が露わになった。

ロジャーの顔は極限まで暗くなった。

こんな侮辱を受けたのは初めてだった!

このアボさんは。

自分が筋肉バカだというだけで、こんなに傲慢で横暴な!

ロジャーはついに我慢の限界に達した。

次の瞬間。

彼は身を低くしてアボさんの重拳を避け、突然相手の懐に飛び込んだ。

アボさんは大笑いし、両手を広げて、ロジャーを抱え込もうとした。

ロジャーは拳を固く握り、突然加速した。

凛々しい拳風が寒夜の峡谷を吹き抜ける北風のように。

アボさんの狂った笑い声の中。

恐ろしい威力が肉眼では捉えられない速度で層々と重なっていった!

瞬く間に。

その拳が突然開き、掌に変わった!

これがロジャーが長く隠し持っていた必殺技。

粉碎掌!

……

「レベルがLV21に上昇しました」

「屬性が上昇しました」

……

「レベルがLV22に上昇しました」

「屬性が上昇しました」

……

「レベルがLV23に上昇しました」

「屬性が上昇しました」

……

「レベルがLV24に上昇しました」

「屬性が上昇しました」

「新技能を獲得しました:骨抜き」

……

その薄い掌がアボさんの逞しい胸に激しく打ち込まれた時。

彼の顔にはまだ歪んだ笑みが浮かんでいた。

その瞬間。

彼の耳元で静かな声が聞こえた:

「誰が俺を武術家だと言った?」

アボさんの体が激しく震え始めた。

彼の口は即座に塞がれた。

ロジャーの右手は激しい衝撃で軽い骨折を起こしていたが。

しかし高い耐久値は依然として彼に後処理を完了させた——

最速で地下室の扉を施錠した。

ロジャーはようやく息をつく機会を得た。

アボさんは間違いなく、彼が異世界に来て以来、直面した最強の敵だった。

もし隱密俠の切り札を隠し持っていなければ。

ロジャーは逃げる方法を考えるしかなかっただろう!

しかしこの戦いの収穫も非常に豊かだった!

データパネルには。

……

「アボさん(黑拳師範/人類/エリート)を倒しました」

「49ポイントのXPを獲得しました」

「40ポイントの義侠値を獲得しました」

「敏捷の欠片*6(クエストアイテム)を獲得しました」

「誅殺令の報酬を受け取っています……」

「アボさんの特技を獲得しました——拳術精通」

……

「拳術精通(3環特技):あらゆる流派の拳法を容易に習得できる;拳の繰り出し速度が35%上昇」

……

少し休息を取った後。

ロジャーは廃墟からかろうじて生きているガーゴイルを掘り出した。

後者は苦労して腹からサンチのるつぼを吐き出し、すぐに彫像の形に戻った。

この重傷を負った後。

体を回復するには大量の時間が必要だった。

ロジャーは彫像をるつぼに投げ入れ、活力ポーションを一本取り出して一気に飲み干した。

そして白鴉の冠を取り出し、額に被せた。

大量の「気」が彼の体に流れ込み、ゆっくりと右手の傷を癒していった。

ロジャーは長く濁った息を吐き出し、心が完全にリラックスした。

ガーゴイルの腹がるつぼを保管できることは、ロジャーが最近になって初めて発見したことだった。

しかし保管時間は24時間を超えてはいけない。

一旦24時間を超えると。

るつぼはガーゴイルに食べられてしまう。

その時にロジャーが自分の物を取り戻したければ。

ガーゴイルをバラバラにするしかなくなる。

「幸い、まだ活力ポーションがある」

彼は思わずもう一本開けて飲み干した。

体がようやく楽になった。

……

3分後。

ロジャーは鯉の跳躍のように地面から跳ね起き、戰利品を漁り始めた。

ポットさんの身には良い物はなかった。

大量の通貨だけだった。

ロジャーが大まかに数えたところ、50〜60枚の銀貨ほどだった。

一方アボさんはちょうど反対だった。

彼の身にはお金はほとんどなかった。

しかし良い物がいくつかあった。

第一のものは当然彼が使っていたあの指輪だった。

……

「蛛語者の指輪」

「ランク:SS」

「屬性:蜘蛛語りの術(蜘蛛様や蜘蛛類生物の言葉が理解できる)」

「特殊効果:セルフステルス」

「エンチャント1:蜘蛛網の術」

「蜘蛛網の術:1環魔法、魔力蜘蛛網を放射し、敵を拘束状態にする」

「制限:1日10回」

「エンチャント2:蜘蛛糸の術」

「蜘蛛糸の術:2環魔法、複数の強力な蜘蛛の糸を放射して相手を絡め取り、伸縮自在に操ることができる」

「制限:1日10回」

……

「なんて強力な指輪だ!」

この一行一行の屬性を見て、ロジャーは舌を打った。

蜘蛛網の術も蜘蛛糸の術も彼には効果がないが。

しかし自分が使うとなれば、とても使い勝手が良い!

指輪のセルフステルスと追加された蜘蛛語りの術に関しては。

どちらも悪くない追加要素だ。

これはるつぼに次ぐ、ロジャーが手に入れた二つ目のSSランクの戰利品だ。

名実共に極上品!

……

二つ目の戰利品は、新奇なデザインのグローブだった。

これはロジャーがあのテーブルの引き出しから見つけたものだ。

アボさんは普段あまり使っていなかったようだ。

屬性を見るだけでもかなり良さそうだ。

……

「荒々しいグローブ」

「ランク:S」

「屬性:装備時、一撃ごとの威力が50%上昇する」

「特殊効果:怒火燃燒」

「怒火燃燒:このグローブを装備すると、耳元で様々な幻聴が聞こえるようになり、この幻聴があなたの心の怒りを増幅させる。具体的な効果は以下の通り:

30秒ごとに'狂暴'を1層獲得する;

'狂暴'は最大40層まで重ねることができる;

'狂暴'1層につき追加で威力と會心の一撃が5%上昇する;

一旦'狂暴'が20層以上に達すると、制御不能になるリスクが常にある」

……

「こんな邪悪な物?」

「これで俺を制御不能にできるとでも?」

ロジャーは少し信じられなかった。

彼は手際よくそのグローブを装着した。

耳元で荒々しい声が聞こえてきた:

「おい?飯食ってないの?ちょっとは力入れろよ?」

「もっと強く!お前は皮を剥いでるのか?」

「くず!くず!くず!お前は完全なるクズだ!」

「言い忘れてたけど、障害者は拳に向いてない。そう、お前のことだよ、知的障害者も障害者だからな……」

十数回呼吸した後。

ロジャーは黙ってグローブを外した。

……