「荒々しい拳套」と「蜘蛛語りの指輪」の他に。
ロジャーは施錠された金庫、散らばった銀角と銅令、二冊の帳簿、一冊の日記、そして署名入りの推薦状を見つけた。
金品は当然すぐに持ち去った。
金庫も同様だ。
ロジャー本人はまだ解錠の技術を習得していないが。
解錠の巻物と解錠道具を購入することを考えている。
帳簿は、純粋に予備として持っていく。
日記と推薦状については、少し興味深い。
ロジャーは大まかに目を通した。
この日記はアボさんが日々書いていたもので——
これを見ると、彼は決して正常な人物ではないことが分かる。
紅袖兄弟會「猛龍組」の首領として。
彼は日記に多くの拳術の心得や、極端な教育理念を記していた。
日記の中程のある頁に。
アボさんはこう書いている——
……
「無実の者に拳を振るう勇気のある者こそが、真の男だ」
「私の弟子になりたければ、拳で覚悟を証明せねばならない」
「たった十人を打ち殺すのは簡単すぎるが、彼らの弱さを考慮して、入門基準としては認めよう」
……
これを見ると。
外にいる上半身裸の「黒拳道場生」たち。
一人一人が少なくとも十人の無実の命を奪っているということだ。
これは彼らが家を襲い、村を破壊した時の罪は含まれていない。
データ欄が点滅した。
……
「アボさんの日記を読み、黒拳道場生の奥義を悟った」
「新職業:黒拳道場生を獲得」
「黒拳道場生選択肢:1.兼職 2.上級 3.拡張モジュール(拡張スロット不足)4.放棄」
……
「荒唐無稽な理念だ」
ロジャーは静かに日記を閉じた。
即座に放棄を選択した。
このようなゴミのような職業は彼の目に留める価値もない。
彼は推薦状に目を向けた。
この手紙もアボさんが書いたものだ。
文字は美しいが、内容は特に見るべきものはない。
ただの形式的な推薦文だ。
この調子を見ると。
優秀な新人を紅袖兄弟會の本部に推薦するためのものらしい。
ロジャーは遠慮なく持ち去った。
これらを終えて。
彼の視線はアボさんの執務室を更に探索し続けた。
見たところ、アボさんは完全な拳の狂人だ。
執務室にある物の大半はサンドバッグと包帯だ。
他に収集できる戦利品は少ない。
これにロジャーは少し不満を感じた。
そのとき。
彼の目の端がアボさんの遺体の異常に膨らんだ部分に気付いた!
「何が私の必殺技を防いだのか見てやる!」
ロジャーは飛びかかり、アボさんのズボンを引き裂いた。
金属の防具か何か高級な防具だと思っていたが。
しかし実際の中身は予想外の見るに堪えないものだった!
……
「アボさんの貞操帶」
「???」
……
ロジャーは黙って手を離した。
初めてこのような事態に遭遇して戸惑いを隠せない。
心の中でただ一言呟くしかなかった:
「アボさんも、拳だけじゃなかったんだな」
そのとき。
大門の外から口論の声が聞こえてきた。
状態が大分回復したロジャーは気を引き締めた。
外には50人近くの黒拳道場生がいる。
彼らのレベルは大半が12から19の間だ。
一見すると数で圧倒的だが。
ロジャーの目には、ただの烏合の衆に過ぎない。
……
執務室の大門の外には、大量の屈強な男たちが集まっていた。
上階の個室で。
ヴィッキーの遺体が発見された。
異変に気付いた黒拳道場生たちは通路を完全に封鎖した。
誰かがドアをこじ開けようとし始めた。
しかしその時。
突然ドアが内側から開かれ。
精巧な小さなガラス瓶が何処からともなく飛んできて、群衆の中央の床に落ちた!
バンという音と共に!
恐ろしい黒い霧が立ち昇り、瞬時に全員の視界を奪った!
黒い霧の広がる速度は非常に速かった。
瞬く間に。
通路全体と両側の部屋を完全に満たした!
全員が視界を失った。
彼らは慌てて押し合い、恐怖の声を上げた。
「何だこれは?」
「あああああ!」
「蛇だ!蛇がいる!助けて!」
……
片隅で。
ロジャーは静かにスカモラの指輪を外した。
これは単なる煙玉ではない。
珍しい闇素の瓶なのだ!
これは本当に全員の視界を奪うことができる。
しかしロジャーには効果がない。
この黒拳道場生たちを全滅させるため、彼は本気で手を尽くした!
そして今。
借りを返す時が来た。
ロジャーは左右にクロスボウを構え。
上半身裸の悪党たちに向かって命を刈り取る射撃を開始した!
……
「黒拳道場生を1名殺害、累計47名の黒拳道場生を殺害」
「8ポイントのXPを獲得」
「12ポイントの義侠値を獲得(任務報酬)」
「敏捷の欠片*1を獲得(任務アイテム)」
……
最後の黒拳道場生が血溜まりの中に倒れると。
ロジャーは無表情でクロスボウを収めた。
しかし彼の心の中は。
既に狂喜乱舞していた!
敏捷の欠片が56個も貯まっただけでなく。
これらの普通の黒拳道場生を倒すことで。
なんと相当な量の義侠値を獲得できた!
これは純粋な予想外の喜びだった。
彼は素早くデータパネルを確認した。
義侠値が一気に517ポイントまで上がった!
いくつかの秘技を学ぶのに十分な量だ。
少し残念なのは。
上級任務期間中に紅袖兄弟會のメンバーを倒した時だけ義侠値が得られることだ。
これにロジャーは少し物思いに沈んだ。
「なぜ上級任務には時間制限があるんだ?」
「これでは私の正義の行いの妨げになるじゃないか?」
「半年の時間があれば、必ずホール鄉野に清浄な天地を取り戻せるのに!」
彼が狂気のように文句を言っている時。
データ欄にこんなヒントが表示された。
……
「義侠値が500ポイントを超えたことを検知、今から特技の段階を義侠値で上昇させることができます」
……
「義侠値で特技の段階を上げられる?」
ロジャーは少し驚き、気分が一気に良くなった。
特技の上昇は非常に時間のかかることだと知っている。
ロジャーは毎日望氣術の熟練度を上げていた。
これだけの時間をかけても。
1段階特技から2段階に上がっただけだ。
ロジャーの昇級速度にも追いつかないほど、特技の上昇は困難だ。
そして今。
一定の義侠値を消費するだけで特技の段階を上げられる。
ロジャーにとってはまさに天からの贈り物だった。
彼は急いで望氣術を選択した。
……
「望氣術(2段階):280ポイントの義侠値を消費して3段階に上昇可能」
……
「高いな!」
ロジャーは少し痛みを感じた。
しかし彼は即座に上昇を選択した!
義侠値は盗賊たちから調達できる。
しかし望氣術の効果はデータでは表現できないものだ。
3段階の望氣術は認知値が上がっただけでなく。
占いの領域でも大きく強化された。
ただ次の段階の上昇に必要な義侠値の量を見た途端。
ロジャーの心は兄弟會メンバーたちの肉体への渇望で満ちた!
……
地下室を一掃した後。
ロジャーは螺旋階段を使って地下二階に降りた。
ここには隠された木製のドアがある。
望氣術が示すところによると。
ドアの向こうには大きな問題がある!
木のドアには複雑な模様の銅の鍵が掛かっていた。
ロジャーはアボさんの引き出しで見つけた真鍮の鍵を差し込み、左右に回してみた。
カチリという音。
鍵が開いた。
彼は息を殺し、そっとドアを押し開けた。
海の匂いが押し寄せてきた。
太い黒い影が予告もなく正面から叩きつけてきた!
ロジャーが早めに警戒していなければ、この一撃は確実に命中していただろう。
彼は横転して避け、上を見上げた。
それは地面にわずかに露出した触手だった!
……
「イカドレの触(極度に弱体化した古代邪物)」
「LV16 生命力99 防禦力7」
「弱点:銳器」
……
ロジャーは手を返し、るつぼから赤月刀を取り出した。
次の瞬間、彼は猛然とその木のドアに突進した。
雷霆の勢いでその触手に斬りかかった!
刀光一閃。
触手は音を立てて切断された!
……
「イカドレの触に罪の印を使用した」
……
「イカドレの触を1体倒した」
「1ポイントのXPを獲得」
「唾液の分泌量が微かに上昇した」
……
「縁起でもない!」
ロジャーの表情が思わず暗くなった。
……