070 イカドレの触

「荒々しい拳套」と「蜘蛛語りの指輪」の他に。

ロジャーは施錠された金庫、散らばった銀角と銅令、二冊の帳簿、一冊の日記、そして署名入りの推薦状を見つけた。

金品は当然すぐに持ち去った。

金庫も同様だ。

ロジャー本人はまだ解錠の技術を習得していないが。

解錠の巻物と解錠道具を購入することを考えている。

帳簿は、純粋に予備として持っていく。

日記と推薦状については、少し興味深い。

ロジャーは大まかに目を通した。

この日記はアボさんが日々書いていたもので——

これを見ると、彼は決して正常な人物ではないことが分かる。

紅袖兄弟會「猛龍組」の首領として。

彼は日記に多くの拳術の心得や、極端な教育理念を記していた。

日記の中程のある頁に。

アボさんはこう書いている——

……

「無実の者に拳を振るう勇気のある者こそが、真の男だ」

「私の弟子になりたければ、拳で覚悟を証明せねばならない」

「たった十人を打ち殺すのは簡単すぎるが、彼らの弱さを考慮して、入門基準としては認めよう」

……

これを見ると。

外にいる上半身裸の「黒拳道場生」たち。

一人一人が少なくとも十人の無実の命を奪っているということだ。

これは彼らが家を襲い、村を破壊した時の罪は含まれていない。

データ欄が点滅した。

……

「アボさんの日記を読み、黒拳道場生の奥義を悟った」

「新職業:黒拳道場生を獲得」

「黒拳道場生選択肢:1.兼職 2.上級 3.拡張モジュール(拡張スロット不足)4.放棄」

……

「荒唐無稽な理念だ」

ロジャーは静かに日記を閉じた。

即座に放棄を選択した。

このようなゴミのような職業は彼の目に留める価値もない。

彼は推薦状に目を向けた。

この手紙もアボさんが書いたものだ。

文字は美しいが、内容は特に見るべきものはない。

ただの形式的な推薦文だ。

この調子を見ると。

優秀な新人を紅袖兄弟會の本部に推薦するためのものらしい。

ロジャーは遠慮なく持ち去った。

これらを終えて。

彼の視線はアボさんの執務室を更に探索し続けた。

見たところ、アボさんは完全な拳の狂人だ。

執務室にある物の大半はサンドバッグと包帯だ。

他に収集できる戦利品は少ない。

これにロジャーは少し不満を感じた。

そのとき。

彼の目の端がアボさんの遺体の異常に膨らんだ部分に気付いた!

「何が私の必殺技を防いだのか見てやる!」

ロジャーは飛びかかり、アボさんのズボンを引き裂いた。

金属の防具か何か高級な防具だと思っていたが。

しかし実際の中身は予想外の見るに堪えないものだった!

……

「アボさんの貞操帶」

「???」

……

ロジャーは黙って手を離した。

初めてこのような事態に遭遇して戸惑いを隠せない。

心の中でただ一言呟くしかなかった:

「アボさんも、拳だけじゃなかったんだな」

そのとき。

大門の外から口論の声が聞こえてきた。

状態が大分回復したロジャーは気を引き締めた。

外には50人近くの黒拳道場生がいる。

彼らのレベルは大半が12から19の間だ。

一見すると数で圧倒的だが。

ロジャーの目には、ただの烏合の衆に過ぎない。

……

執務室の大門の外には、大量の屈強な男たちが集まっていた。

上階の個室で。

ヴィッキーの遺体が発見された。

異変に気付いた黒拳道場生たちは通路を完全に封鎖した。

誰かがドアをこじ開けようとし始めた。

しかしその時。

突然ドアが内側から開かれ。

精巧な小さなガラス瓶が何処からともなく飛んできて、群衆の中央の床に落ちた!

バンという音と共に!

恐ろしい黒い霧が立ち昇り、瞬時に全員の視界を奪った!

黒い霧の広がる速度は非常に速かった。

瞬く間に。

通路全体と両側の部屋を完全に満たした!

全員が視界を失った。

彼らは慌てて押し合い、恐怖の声を上げた。

「何だこれは?」

「あああああ!」

「蛇だ!蛇がいる!助けて!」

……

片隅で。

ロジャーは静かにスカモラの指輪を外した。

これは単なる煙玉ではない。

珍しい闇素の瓶なのだ!

これは本当に全員の視界を奪うことができる。

しかしロジャーには効果がない。

この黒拳道場生たちを全滅させるため、彼は本気で手を尽くした!

そして今。

借りを返す時が来た。

ロジャーは左右にクロスボウを構え。

上半身裸の悪党たちに向かって命を刈り取る射撃を開始した!

……

「黒拳道場生を1名殺害、累計47名の黒拳道場生を殺害」

「8ポイントのXPを獲得」

「12ポイントの義侠値を獲得(任務報酬)」

「敏捷の欠片*1を獲得(任務アイテム)」

……

最後の黒拳道場生が血溜まりの中に倒れると。

ロジャーは無表情でクロスボウを収めた。

しかし彼の心の中は。

既に狂喜乱舞していた!

敏捷の欠片が56個も貯まっただけでなく。

これらの普通の黒拳道場生を倒すことで。

なんと相当な量の義侠値を獲得できた!

これは純粋な予想外の喜びだった。

彼は素早くデータパネルを確認した。

義侠値が一気に517ポイントまで上がった!

いくつかの秘技を学ぶのに十分な量だ。

少し残念なのは。

上級任務期間中に紅袖兄弟會のメンバーを倒した時だけ義侠値が得られることだ。

これにロジャーは少し物思いに沈んだ。

「なぜ上級任務には時間制限があるんだ?」

「これでは私の正義の行いの妨げになるじゃないか?」

「半年の時間があれば、必ずホール鄉野に清浄な天地を取り戻せるのに!」

彼が狂気のように文句を言っている時。

データ欄にこんなヒントが表示された。

……

「義侠値が500ポイントを超えたことを検知、今から特技の段階を義侠値で上昇させることができます」

……

「義侠値で特技の段階を上げられる?」

ロジャーは少し驚き、気分が一気に良くなった。

特技の上昇は非常に時間のかかることだと知っている。

ロジャーは毎日望氣術の熟練度を上げていた。

これだけの時間をかけても。

1段階特技から2段階に上がっただけだ。

ロジャーの昇級速度にも追いつかないほど、特技の上昇は困難だ。

そして今。

一定の義侠値を消費するだけで特技の段階を上げられる。

ロジャーにとってはまさに天からの贈り物だった。

彼は急いで望氣術を選択した。

……

「望氣術(2段階):280ポイントの義侠値を消費して3段階に上昇可能」

……

「高いな!」

ロジャーは少し痛みを感じた。

しかし彼は即座に上昇を選択した!

義侠値は盗賊たちから調達できる。

しかし望氣術の効果はデータでは表現できないものだ。

3段階の望氣術は認知値が上がっただけでなく。

占いの領域でも大きく強化された。

ただ次の段階の上昇に必要な義侠値の量を見た途端。

ロジャーの心は兄弟會メンバーたちの肉体への渇望で満ちた!

……

地下室を一掃した後。

ロジャーは螺旋階段を使って地下二階に降りた。

ここには隠された木製のドアがある。

望氣術が示すところによると。

ドアの向こうには大きな問題がある!

木のドアには複雑な模様の銅の鍵が掛かっていた。

ロジャーはアボさんの引き出しで見つけた真鍮の鍵を差し込み、左右に回してみた。

カチリという音。

鍵が開いた。

彼は息を殺し、そっとドアを押し開けた。

海の匂いが押し寄せてきた。

太い黒い影が予告もなく正面から叩きつけてきた!

ロジャーが早めに警戒していなければ、この一撃は確実に命中していただろう。

彼は横転して避け、上を見上げた。

それは地面にわずかに露出した触手だった!

……

「イカドレの触(極度に弱体化した古代邪物)」

「LV16 生命力99 防禦力7」

「弱点:銳器」

……

ロジャーは手を返し、るつぼから赤月刀を取り出した。

次の瞬間、彼は猛然とその木のドアに突進した。

雷霆の勢いでその触手に斬りかかった!

刀光一閃。

触手は音を立てて切断された!

……

「イカドレの触に罪の印を使用した」

……

「イカドレの触を1体倒した」

「1ポイントのXPを獲得」

「唾液の分泌量が微かに上昇した」

……

「縁起でもない!」

ロジャーの表情が思わず暗くなった。

……