076 弁舌さわやか

「灰色ドワーフの認可って何だよ?」

ロジャーは眉をひそめた。

思わずぼやいた:

「仲間の認可を得るのに称号なんて必要なのか?」

さらに付与された10ポイントの「方向感知能力」。

望氣術を持つロジャーにとっては、まさに蛇足だった。

「称号システムは相変わらずだな」

ロジャーは黙って新特技に目を移した。

……

「深海の息吹(2環特技):深海領域での行動が深海の特殊制限を受けない」

……

この特技は一見平凡に見える。

しかし特定の場面では、かなり役立つ。

というのも。

深海と地核は古代邪物や他の強大な魔物の領域だ。

彼らの縄張りでは、冒險者たちの一挙手一投足が大きな制限を受ける。

そして深海には魔物の種類が極めて多い。

罪の印を集めるために。

ロジャーは必ず行くことになるだろう。

その時、この特技が役に立つはずだ。

……

ロジャーがイカドレの触の母体を討伐した後。

死兆の郷の既に崩壊寸前だった秩序は完全に崩壊した。

空一面の炎の光の中で。

盗賊たちは慌てふためいて逃げ惑っていた。

全ての倉庫が乱暴に開けられた。

彼らは様々な物資を奪い合い、そのために殴り合いまでしていた。

霜のガーゴイルは死神のように。

不意に現れては、最速で盗賊たちの命を奪っていった。

それに比べて。

ロジャーの狩りの効率は少し劣っていた。

それでも。

この夜が明けるまでに。

彼の手にかかった紅袖ブラザーフッドの成員は120人以上に達した!

ガーゴイルの方がさらに多く、データ欄によると231人だった。

仕方ない。

レベル35のエリートモンスターは、指揮系統を失った状態では、盗賊たちにとって次元が違う存在だった。

もしこの400人以上が団結できていれば、正面から戦えば、ガーゴイルと昇級しないロジャーを確実に倒せただろう。

しかし残念ながら、ロジャーは正面からの戦いの機会を与えなかった。

……

朝日が昇る頃。

ロジャーは兵舎の間を歩き回り、逃げ残りがいないか探していた。

昨夜の殺戮と火災の後。

死兆の郷には荒廃と寂寥だけが残された。

かつての賑わいは消え、まるで死の街のように静まり返っていた。

時折音が聞こえてくるが。

それは盗賊たちに捕らえられていた一般市民たちが物資を探している音だった。

これらの人々に対して。

ロジャーは可能な限り援助する姿勢を取った。

午前中いっぱいかけて。

全ての生存者を送り出した。

死兆の郷には彼一人だけが残された。

……

昼食後。

ロジャーは最も高い兵舎の上に立ち、北方のトンネルを見つめながら眉をひそめた。

オルポートは最後まで現れなかった。

これは不吉な予感を抱かせた。

昨夜、列車で結界に突っ込んだ時点で、オルポートは気付いているはずだった。

「前線」がどんなに遠くても、今頃は戻ってきているはずだ。

「何かおかしい」

死兆の郷は静寂に包まれていた。

嵐の前の静けさのような感覚があった。

ロジャーは少し躊躇した後。

最終的に占いの能力を使うことを決めた。

……

望氣術による占いには多くの制限がある。

第一は回数だ。

一日最大三回までしか占えない。

これは越えられない底線だ。

第二は副作用。

占いの度に一定の「運気」を消費する。

ロジャーは今でも「運気」が一体どんな屬性なのか、消費するとどんな害があるのか分かっていない。

しかし直感的にそれが良いことではないと感じていた。

第三は占い自体についてだ。

占いは危険と未知に満ちた駆け引きのプロセスだ。

だから占いの結果には高い偶然性がある。

時には、見た光景が真実なのか、あるいは誰かに見せられた真実なのか分からない。

……

これらの理由から。

ロジャーは占いの使用に慎重な態度を取っていた。

しかし現状は。

オルポートは彼の上級任務の成否に関わっている。

この占いは、避けられないものだった!

……

「占い:オルポートの位置」

……

映像が激しく揺れ動いた。

まるで果てしないトンネルのようだった。

耳元で息遣いが聞こえ、急いでいて、少し慌てているようだった。

かすかに。

ロジャーは奇妙な風の音を聞いた。

そして少し聞き覚えのある足音も。

突然。

目の前の映像が急速に後ろに引いていった。

ロングショットのような視点で。

ロジャーは高速で移動する灰色の影を見た。

……

「何だこれは?」

ロジャーは思わずデータ欄を確認した。

……

「ヒント:あなたはオルポートの一時的な視点を得た」

……

「だから、彼は急いでいたのか?」

「死兆の郷に戻る途中だったのか?」

ロジャーの心の中の不安がさらに強くなった。

突然。

彼の頭にこんな考えが浮かんだ:

「こいつ、逃げ出したんじゃないか?!」

あの時の屍羅妖と同じように!

考えれば考えるほど、その可能性が高まってきた。

そう思った瞬間。

彼は屋根から飛び降り、北方へと急いだ。

数息の間に。

北方のトンネル入口に到着した。

ここはダンジョンへの入口だった。

ロジャーが様子を見に行こうとした時。

トンネルから物音が聞こえてきた。

凶悪な目つきをした、ぼろぼろの服を着た男が走り出てきた。

彼はロジャーを見ると、救いを求めるかのように大声で叫んだ:

「急いでカペラ様に報告を!」

「灰色ドワーフが攻めてきた!」

「オルポート様が私たちを置き去りにして逃げました!」

そう言い終わると。

彼は立ち止まって大きく息を切らした。

両足は震えが止まらなかった。

ロジャーの心臓が一瞬止まりそうになった。

「くそっ!」

「これはマジでおかしい!」

「オルポートと紅袖兄弟會の連中が灰色ドワーフに負けるなんて?」

彼は呆れ返った。

なぜいつも「任務の途中で目標が逃げ出す」なんてことが起こるんだ!

ロジャーは歯ぎしりするほど腹が立った。

トンネルからまたガサガサという音が聞こえてきた。

その男の顔色が一瞬で真っ青になり、つぶやいた:

「なんでこんなに早いんだ?なんでこんなに早いんだ?」

「お前がここで時間を稼いでくれ、俺は足が速いから知らせに行く!」

そう言って死兆の郷の方向へ走り出した。

しかし数歩も進まないうちに、つまずいて地面に倒れ、苦痛の呻き声を上げた。

ロジャーは彼を一瞥もせずに。

トンネルの入口から。

装備の整った灰色ドワーフの騎士隊が飛び出してきた。

ロジャーは目を細めて、少し興味深そうな表情を浮かべた。

この灰色ドワーフの一隊は少し違っていた。

白月城の灰色ドワーフと比べて、彼らははるかに強そうだった!

彼らの目つきは非常に鋭かった。

また、彼らが乗っている地底トカゲも上質な品種だった!

最も重要なのは。

彼らの首には肉瘤がなかった!

ロジャーは試しに罪の印を投げかけてみた。

不思議なことが起こった。

……

「ヒント:罪の印は魔物の領域にのみ有効です」

……

「これが正常な灰色ドワーフ?」

「じゃあ白月城の連中は一体何なんだ?」

ロジャーは考えながら、青銅の剣を抜いた。

そのとき。

先頭を走っていた灰色ドワーフが突然手綱を引いた。

勢いよく突進してきたトカゲたちは一斉に足を止めた。

両者は五十メートルほどの距離を置いて、しばらく睨み合った。

地面に倒れた盗賊の呻き声がますます大きくなった。

灰色ドワーフの騎士たちは互いに近づき、しばらくごそごそと話し合っていた。

ロジャーは「破壊者」「首領」といった言葉をかすかに聞き取った。

しばらくして。

灰色ドワーフの騎士たちは手綱を引き、自ら退却していった。

彼らの姿がトンネルの奥深くに消えていくのを見つめながら。

ロジャーの顔に深い思索の表情が浮かんだ。

……

三日後。

湖畔の町の近郊。

一つの焚き火の周りに、十数人が集まっていた。

その半数は地底人だった。

残りは様々な種族が混ざっていた。

焚き火のそばで。

灰色の袍を着た男が熱弁を振るっていた:

「伊卡多雷の名を心の中で唱えるだけで、その御目に留まる機会が得られる。」

「伊卡多雷は決して信者を裏切らない。見よ、この金時計がその証拠だ。」

「今日の集会に参加された皆様は湖畔の町の実力者たち。同盟についてまだ疑念があることは承知していますが、時が経てば私の言葉が真実だと証明されるでしょ……」

突然の刃の光が閃いた。

灰袍の男の首が地面に転がった!

他の者たちは驚いて飛び上がり、警戒しながら距離を取った。

焚き火のそばに。

奇妙な形の長刀を持った男がゆっくりと姿を現した。

「くそっ。」

「やっと見つけたぞ。」

彼は不明瞭にぶつぶつと呟いた。

……

「オルポート(人類/エリート)を倒しました」

「11ポイントのXPを獲得しました」

「69ポイントの義侠値を獲得しました」

「敏捷の欠片*1を獲得しました」

「誅殺令の報酬を受け取っています……」

「オルポートの特技『弁舌さわやか』を獲得しました」

……

「誰が想像できただろうか、紅袖兄弟會の大物が詐欺師だったとはな?」

データ画面に表示された新特技を見ながら。

ロジャーは心の中で何度も首を振った。

データ画面に。

一行の情報が静かに浮かび上がった。

……

「上級任務の要件を満たしました(天命級)。任務を完了しますか?」

……