117 六虛遊気

ロジャーは心を動かされ、香楠の木の方へ近づこうとした。

しかし、エーテル喰竜があまりにも多すぎた。

彼は十分な防御対策を講じていたにもかかわらず。

敵の数が一定の規模に達すると、やはり彼の行動に影響が出始めた。

彼は仕方なく後退せざるを得なかった。

大群のエーテル喰竜が執拗に追いかけてきた。

粉碎掌を次々と繰り出す!

大量のエーテル喰竜が空中から叩き落とされた!

しかし、奴らは死を恐れず襲いかかってきた。その勢いは極めて凶暴だった。

この魔物は肉の翼を持つトンボのような姿で、超ミニサイズの七色竜のようでもあった。

奴らの爪は実に鋭かった。

銅皮鐵骨と鋼鐵補劑による基礎防御値がなければ。

ロジャーは持ちこたえられなかっただろう。

戦いが続く中。

形勢不利を悟ったロジャーは戦いながら後退し始めた。

しかしエーテル喰竜たちは明らかにロジャーを見逃すつもりはなく、執拗に追撃を続けた。

彼の服はボロボロに引き裂かれていた。

耳栓も鼻栓もちぎれてしまった。

「本当に手強いな」

ロジャーは密かに嘆息し、即座に走り出した。

幸いにも速度に関しては。

エーテル喰竜はロジャーの敵ではなかった。

あっという間に。

彼は魔物たちの包囲網から逃れ、自宅に戻った。

次の瞬間。

彼は白鴉の冠と新月の玉佩を取り出し、ほぼ枯渇した体内の「気」を徐々に補充し始めた。

仕方がない。

粉碎掌も実は隠れた気の大食いだった。

ロジャーの持つ気は326ポイント。

一回の掌を繰り出すごとに。

3から6ポイントの気を消費する。

一度の戦闘で最大でも百八十回ほどしか繰り出せない。

しかしエーテル喰竜の数は何千何万もいるのだ!

ジョニータートルとは違い。

この種の魔物は極めて高い攻撃性を持っている。

十分な準備をしていたにもかかわらず、なお双拳四手に及ばずといった様相を呈していた。

「魔法免疫に高防御、追跡不可能で群れを成して凶暴か...こいつら反則じゃないか」

気を回復しながら。

ロジャーは思わずエーテル喰竜の正体について考え始めた。

名前から推測するに。

この魔物はおそらくエレメントを餌としているため、浮島で蔓延しているのだろう。

奴らが香楠の木に群がる様子は、まるで美女を追いかける痴漢の群れのようだった。

ただ単純に好きなだけのようだ。

実際のところ。

もし奴らが香楠の木を餌にしているのなら、あの古木は根こそぎ食べられていただろう。

「莎爾はエーテル喰竜が自然発生ではないと言っていた。となると人工的に培養されたということか?」

「一体誰が、こんな魔物を培養するほど狂っているんだ?」

「魔法使いたちへの対抗者?それとも、魔法使いたち自身か?」

ソファに座り。

ロジャーは様々なことを考えた。

……

二時間後。

気力を完全に回復したロジャーは再び出発した。

今度は。

彼は別の攻撃方法を選んだ!

林場で。

彼は「エーテル痴竜」の群れに囲まれた香楠の木を正面から見つめ、一気に気を込めた。

宗師の怒目!

次の瞬間。

サーチライトのような二筋の青い光が走り抜けた。

「青眼の慧光」に当たったエーテル痴竜は、体から青い煙を立ち上らせた!

ばらばらと!

ロジャーは一掃で大量の敵を倒した。

その感覚は、まるで殺虫剤を手にした銃士が蚊の群れに向かって噴射し続けているかのようだった!

「たまらない!」

激しい快感が次々と押し寄せてきた。

その瞬間。

ロジャーは夢中になっていた。

彼は青眼の慧光の角度を調整し、この魔物の群れに向かって乱射を始めた!

ふふふ。

また大量のエーテル痴竜が非業の死を遂げた。

しかし青眼の慧光の貫通力があまりにも強すぎた。

気づかないうちに。

香楠の木にもいくつかの穴が開いてしまった。

……

「第六感:香楠の木はあなたへの感謝と贈り物を取り下げました」

……

「あ、これは...」

ロジャーは慌てて角度を抑え、なるべく周囲の木々に被害が及ばないようにした。

それに。

彼も次のキツツキさんになりたくはなかった。

しかしまもなく。

痴竜たちは犯人を発見し、一斉に傲慢な態度で襲いかかってきた。

すぐに。

ロジャーはまた戦いながらの撤退、そして最終的には敗走というパターンを繰り返すことになった。

10分後。

家の中、ソファの上で、いつもの姿勢。

「宗師の怒目の効率が粉碎掌よりも低いとは思わなかった!」

ロジャーは眉をひそめながら戦況を確認した。

粉碎掌は少なくとも一度に200体以上のエーテル喰竜を倒せた。

宗師の怒目は見た目は格好いいが、実際はあまり役に立たず、何度も掃射しても80体ほどしか倒せなかった。

結局のところ持続力が足りないのだ。

宗師の怒目の起動には90ポイントの気が必要で。

その後毎秒少なくとも1ポイントの気を消費する。

これはロジャーにとって4分間しか持たないということを意味していた。

時間が過ぎれば。

彼の気は尽きてしまう。

そのため実際の効率は高くなかった。

「今回の相手は雷奔龍より手ごわいな」

ロジャーは二つの珍品を置きながら、深い思考に沈んだ。

……

その後数日間の夜。

ロジャーはエーテル喰竜狩りにおける気の様々な応用方法をテストし続けた。

しかし残念ながら効果は芳しくなかった。

むしろ夜の過度な労働により、昼間の莎爾への治療の質が大幅に低下してしまった。

これは女魔術師の不満を招いた。

彼女はロジャーが密かに他の金持ち女性と関係を持っているのではないかと疑うほどだった。

しかしロジャーの疲れ果てた様子を見て。

莎爾は思いやりのある態度で彼に一週間の休暇を与えた。

ただし、ロジャーは二週間後のある会合に彼女と同行することを条件とした。

以前、彼が雇用主からの招待を続けて二回断っていたことを考慮して。

今回ロジャーは承諾した。

家に帰る途中。

彼の心の中では、どうやってマッサージ師の仕事を正当に辞めるかを考えていた。

しかし莎爾が浮島での人脈とリソースの面でまだ大きな価値があることを考慮し。

彼は一時的にこの考えを諦めた。

……

夜。

ロジャーは洗面所から出て、両手の水滴を払い落とした。

赤土荒野で巨神蟻を狩りに行く時間を作ろうと考えていた。

腎臓の代謝能力の向上による身体の変化は明らかだった。

例えば、今では睡眠の必要性が極めて低くなっていた。

一日4時間で十分だった。

また例えば。

尿の色が濃くなっていた。

これはより強力な再吸収能力によるものだと推測していた。

どちらにしても。

良いことだった。

……

今夜のロジャーは香楠の木を救うことを急がなかった。

代わりに靜室に座り、黙々と瞑想と気の運行を行った。

30分後。

彼は目を開け、データパネルを軽くタップした。

……

「あなたの氣功師レベルがLV2に上昇しました」

「あなたの気の総量が少し増加しました」

「あなたの第四の穴への刺激度が少し上昇しました」

「新特技を獲得しました:六虛遊気」

……

「六虛遊気(6環特技/自己適応調整):体外に気を放出し、一つの循環を完了させた後、素早く回収することができます。このプロセスで、放出された気は少量のダメージまたは治療効果をもたらします。

循環を一回完了するごとに、気の総量が僅かに増加し、同時に經穴への刺激も強まります。

気の放出距離は気の総量によって決定されます。現在の放出可能範囲:6~12センチメートル」

……

大量の経験値が失われていくのを見て。

ロジャーは胸が痛んだ。

しかし仕方がなかった。

彼は早起き鳥の券でこの特技を学ぼうと考えていた。

しかしシステムは、早起き鳥の券は先行して進階した超凡職業には使用できないと通知した。

そのため。

涙をのんで昇級するしかなかった。

説明から分かるように、「六虛遊気」は実際には補助特技だ。

その主な機能は「養気」と「突穴」だ。

しかしロジャーから見れば。

この特技は彼が現在直面している問題を完璧に解決してくれる。

第一に。

六虛遊気で放出された気は回収可能で、このプロセスではあまり消費しない。

これは極めて高い持続性を意味する。

第二に。

エーテル喰竜は1環の小物で、ライフポイントが低く、気によるダメージは致命的だ。

これは狩獵の効率を保証する。

「今日こそ、香楠の木を救う任務を完了できるだろう?」

ロジャーは自分の荒れた両手を見つめ。

満足げな笑みを浮かべた。

……

深夜。

林地の端。

一匹の敏捷なガーゴイルが突然地面を掠め、厚いフロストの層を残した。

石小剛は忠実に見張りの任務を遂行していた。

そして林地の奥深くでは。

「六虛遊気」を発動したロジャーはすでに血に目を血走らせていた!

最初は。

彼の動きはまだぎこちなく、加減が掴めていなかった。

しかしすぐに。

彼はこの技の使用に熟達した!

力を入れる必要すらなく、両掌をエーテル痴竜の群れに近づけるだけで——

噴出して循環回収される気の流れの中で。

大量の魔物が一瞬で命を落とした。

その瞬間。

彼はまるでガンマンの殺虫剤からハイテク害虫スプレーに進化したかのようだった。

一吹きで確実に仕留める。

香楠の木の周辺の地面には。

すでに厚い層の竜の死骸が積もっていた。

このような理不尽な必殺技の前に。

好き勝手に振る舞っていた痴竜たちはついに生死の間に大きな恐怖があることを理解した!

深夜になると。

まだ香楠の木の周りに残っているエーテル喰竜はわずかとなっていた。

……

「エーテル喰竜を1匹倒しました。累計エーテル喰竜討伐数1654匹」

「1ポイントのXPを獲得しました」

「反射力が僅かに上昇しました」

……

「あなたのマイルストーン-強者による弱者いじめが新記録を更新しました」

「強者による弱者いじめ:極小化魔物の虐殺に対して、あなたは独特の趣味を持っているようです」

「対応称号:見縫插針の魔物狩り(極小化魔物へのダメージ+15%;視野-15%)」

……

このマイルストーンはロジャーが巨神蟻を狩っていた時に手に入れたものだ。

あまり大したものには見えないが。

更新するたびに新しいマイルストーンポイントがもらえるのは気持ちいい。

一晩中戦い続けて。

ロジャーは相当なXPを獲得した。

しかし罪の印の進行度はまだ1%にも達していなかった。

初期の見積もりでは。

少なくとも16万匹のエーテル喰竜がロジャーの要求を満たすために必要だった。

理論的には難しくない。

ただしこの数字は。

彼に雲臺山での青春時代を思い出させた。まさに:

「昔年雲臺の洞窟中。

我と魔蛙情義濃し。

魔蛙知らず何処に去りぬ。

浮島独り痴竜を狩る。」

……

「いい詩だ。」

ようやく駄作の詩を詠み上げたロジャーは心が晴れ晴れとした。

そばの香楠の木さえも清楚に見えてきた。

そのとき。

香楠の木の樹皮がビリッと裂け。

小さな裂け目が現れた。

……

「第六感:香楠の木からの贈り物を受け取りました。手を中に入れてみましょう……」

……

ロジャーは心を動かされ、中に手を入れた。

裂け目の中は湿っぽくて滑らかだった。

しばらくすると。

彼は二つのものを取り出した。それは水々しい玉と玉で作られた令牌だった。

……

「曲風マスターの辟水珠(寶物)」

……

「清風令(寶物)」

……

ロジャーがこの二つの寶物を細かく観察している時。

耳元に突然極めてゆっくりとした声が聞こえてきた:

「ありがとう。」

「若き……氣功師よ。」

「私は、私には……」

……