142 琴と「白虎訣」

……

「一代の宗師:少なくとも外見はそれらしく見える」

「対応する称号:見た目が良く、気品のある武術家(非職業者からの認知度+50)」

……

「なるほど」

ここまで見て。

ロジャーは悟った。

先ほどまで武術家に魅力が必要な理由が分からなかったが、称号の属性が全てを物語っていた。

見た目を良くするのは、より良い人材を集めるため!

他の職業と違い、武術家は門派単位で発展する。

そして門派の発展には多くの門弟の努力が欠かせない。

高悟性の武術の天才を見出すには、さらに膨大な人数が必要となる。

そのため、いかにして門弟を集めるかが武術師範たちの最重要課題となっていた。

優れた気品と外見は、もちろん大きなプラスポイントとなる。

だからこそ歴代の清泉宗の首領は凛々しく、気品に満ちていた。

たとえ容姿が平凡でも。

気品だけは完璧に保っていた。

人は見た目が大事というのは冗談ではない。

ロジャーの魅力はミストラでは目立たない部類だった。

しかし首領の正装を身につけると、彼の気場は急上昇した。

魅力に換算すると。

14ポイント近くになっていただろう。

これは一般人に対して強烈な影響力を持つ数値だ。

もちろん。

一代の宗師の気品は単なる見栄や格好良さだけではなく、より多くは從容不迫の威厳にある。

魅力で生きる術士たちとは違う。

武術師範の気場は親和力、威嚇能力、人格的魅力を兼ね備えている……

それは「容姿が平凡でも、一挙手一投足に人々の心を揺さぶる」という感覚だ。

これは確かに衣装の効果もあるが。

'気'とも切っても切れない関係がある。

……

一言で言えば。

ロジャーは突然かっこよくなった。

唯一の問題は。

彼のかっこよさを鑑賞できる人がいないことだ。

道場には女性が二人しかおらず、一人は機械人形で、もう一人は目が見えない。

彼は手を後ろに組んで。

歴代首領の所作を真似て、亭台楼閣の間を半日かけて歩き回った。

最後に。

キツツキさんだけが心からの賛辞を送った:

「ご主人様は本当に素晴らしいです」

この言葉を聞いて、ロジャーは背筋がぞわぞわした。

鼻が酸っぱくなった。

……

秘密庫で。

格好をつけ損ねたロジャーは必死に心の埋め合わせを求めた。

山積みの金貨と銀貨が、彼の心の寂しさを十分に和らげてくれた。

さらに素晴らしいのは、手触りの良い武術の玉簡の数々だ。

これこそが清泉宗の真の伝承の至宝!

各玉簡の下には薄い冊子が一冊ずつ置かれている。

冊子には玉簡に刻まれた武術の名称と解説が記されていた。

この69個の玉簡。

清泉宗歴代首領の全ての奥義が集められているのだ!

その中には曲風マスターの「小擒拿術」も含まれていた。

開山拳と粉碎掌については。

これらの精緻級の武術は玉簡に刻むことができない範疇だった。

これらの玉簡の価値の高さが窺える!

このような極上中の極上の武術に対して、ロジャーは軽率に扱うことはできなかった。

彼は半日以上かけて。

やっと自分と琴それぞれに適した武術を一つずつ選び出した。

琴の進歩速度を考慮して。

ロジャーはすぐに彼女を呼び出した。

玉簡の重大な意義を少女に丁寧に説明した後。

彼は正式に「白虎訣」という武術を琴に伝授した。

琴は純粋な少女だ。

玉簡を受け取ると。

彼女はすぐに心を無にして悟りを開こうとした。

しかし今回は。

ロジャーを密かに喜ばせる出来事が起こった——

琴は白虎訣の習得過程で何度も壁にぶつかった!

最初の習得に6時間もかかった。

しかも失敗した!

これにロジャーは白虎訣を創り出した先代首領に深い感謝と賞賛の念を抱いた。

白虎訣は彼の教師としての不安を完璧に解消してくれた。少なくとも短時間で琴に追い越される心配はなくなった。

もちろん。

弟子を教えるのに打撃を与えることばかりではいけない。

ロジャーは時々琴の心を癒すようなことを言った:

「大丈夫だ、君は既に十分凄い」

「師匠は君の年齢の時、まだ魔爆蛙を倒していたところだぞ!」

「え?君は既に八十歳過ぎ?うーん、私の目にはまだ子供に見えるがな……」

「このレベルの武術は確かに難しい、私でも相当時間がかかるだろう」

これに対して。

少女は落ち込みながらも頑固な様子を見せた。

「先生は私を慰めているんですよね?先生なら、とっくに習得されているはずです」

「心配しないでください、私はそんなに脆くありません、自分で問題を解決できます!」

ロジャーは琴の反応に満足していた。

彼女の修行状態に問題がないことを確認してから。

彼は自分の修行に取り掛かり始めた。

ロジャーが自分のために選んだ玉簡は「食気術」と呼ばれるものだった。

これは進階職業が気功師である首領が創造したものだ。

この術は正真正銘の練気武術だ——

その指導思想は天地間を漂う気を吸収することで、自身の体内の気の量を増強するというものだ。

最終的には「気吞寰宇」の境地に達する!

小冊子の説明によると、これは非常に霸道な武術だった。

最も重要なのは、ロジャーの成長理念に特に適していることだ。

そのため彼は迷わずこれを選んだ。

しかし。

ロジャーが「食気術」の習得を始めようとした時。

予想外のことが起こった!

……

「ヒント:悟性が20ポイント不足しているため、武術の玉簡から武術を習得することができません」

……

「あぁ……」

ロジャーはわずか2、3秒頭を悩ませただけだった。

そして迷わず「食気術」の玉簡を元の場所に戻した。

残りの属性ポイントを全て「悟性」に振り分けることなど、明らかに不可能だった。

そのため、これらの玉簡はロジャーにとって飾りと化してしまったのだ!

秘密庫には武術の秘伝書がないことを考えると。

ロジャーにとって、秘密庫で価値のあるものは、あの格好いい装備一式と散らばる金貨や銀貨の他には。

書物だけとなってしまった!

「まぁいいか」

「修行の方法を考えるより……外に出て気の数を増やすのに役立つ運命の人に出会えないか探す方が良さそうだ」

「なるほど、曲風マスターがあのマッチマンを残したのは、後継の首領の悟性が平凡だと心配したからか……」

手にした清風令と玉泉の令を見つめ。

そして山腰の庭で、必死に玉簡を握りしめて武術を会得しようとする少女の頑固な姿を見て。

ロジャーは複雑な思いに駆られた。

「でも秘密庫を開いたことで、「護山大陣」の一部を操る権限を得たんだ」

ロジャーの心が動いた。

頭上のピクセル画風が突然変わり、写実的な青空となった。

空には。

規則正しく浮かぶ影の塊があった。

それは浮島と真理の山だった。

護山大陣は今、廃墟区域の地表の光景を映し出していた。

突然。

浮島のさらに上空から、大きな羽毛が次々と降り注いできた。

羽毛は廃墟区域の古い香楠の木の上に落ち。

すぐに静かに溶けていった。

「雪が降ってきたか」

ロジャーは小声で呟いた。

また一年の冬がやってきた。

……

冬。

それはロジャーがこの世界に転生してきた季節。

そして彼が自分に課した"蓄積"の時期でもあった。

この季節、彼は通常狩りに出ることはなかった。

代わりに決まった場所に留まり、過去一年の成果を消化していた。

今年の冬も例外ではなかった。

ロジャーが読み、学び、実践すべきことが山ほどあった——

秘密庫の書物に記されたタレンと清泉宗の歴史。

真理協會の世界観と天神滅世についての研究。

エーテル知識、装備知識、毒物知識、密門の知識……

これらの膨大な情報を整理するだけでも大仕事だった。

同時に。

ロジャーは毎日拳を打ち気を練り、銃を撃ち雷を操り、隱密俠としての技を磨き続けた。

その後。

時間を見つけては様々なアイテムの研究と制作も行った。例年は薬剤学分野が中心だった。

今年は萬格バッグの誘惑に負け。

自然と裁縫分野にシフトしていた。

このように。

狩猟期に比べ、冬のロジャーはむしろ忙しく疲れていたが、生活は充実していた。

琴の誕生日の日だけ、ロジャーは自分に一日の休暇を与えた。

それ以外の時は機械のように忙しく働いていた。

もちろん。

ロジャーの努力は報われないわけではなかった。

少なくとも琴は、ロジャーが手作りした「火絨包×100」を受け取った時、喜びの涙を流した。

涙を拭うと。

少女の頑固さが再び顔を出した。

彼女は頑なに辞退しようとした。

ロジャーが清泉宗の弟子の標準装備だと嘘をつくまで、彼女は躊躇いながらも受け取った。

「ありがとうございます、師匠……」

この言葉は小さな声で。

「これは世界で最も素晴らしい収納アイテムですね。400個ものスロットがあるなんて……おばあちゃんでも驚くでしょうね」

この言葉は。

少女は大きな声で感嘆した。

その瞬間。

ロジャーは自分の腰に下げた物を軽く撫でながら、黙って微笑んだ。

そこには。

6000スロットの火絨包が静かに控えめに付けられていた。

外見上は。

琴のバッグと何も変わらなかった。

……

あの日以来。

ロジャーは日々の学習と仕事に再び没頭した。

このような状況下では。

光陰矢の如しという言葉は、もはや陳腐な決まり文句ではなくなっていた。

冬が去り春が来る。

あっという間に。

4ヶ月が過ぎていた。

……

無限迷宮。

第三層。

「ドドドン!」

第二形態で。

ロジャーの尾による容赦ない絞殺の一撃で。

関門を守る「襲撃者の君主」が轟然と倒れた。

大量の素材に加えて。

クリアを象徴する発着台も同時に上昇した。

しかし、これまでと違って。

今回のクリア報酬は三択ではなく。

金箔が施された一枚の手紙だった。

……

「ヒント:仙宮からの招待状を手に入れた」

……

手紙の質感と文面の形式は、ロジャーにとって見覚えのあるものだった。

……

「謹んで私の書斎へご案内申し上げます。十二月十四日、仙宮の下にて、必ずお越しください!」

……

差出人は「仙宮に最も近い男:ヘディワラ」。

……

「超常感知:この招待状は表面的に見えるほど単純なものではないと気付いた。これは単なる招待状ではなく、'虚界'への鍵でもある」

……

「招待状の真の内容の解読を開始した……」

……