夜明け前、朝日がまだ昇らぬ東河郡城では、名士たちや情報通の勢力が、府衙からの知らせを待っていた。
一方、庶民や小商人たちは、新しい一日の生計の準備を始めていた。
そのとき、複雑な足音が大通りから路地まで響き渡った。
「朝廷の命により、天母教の邪徒を捕らえる。すべての者は戸を閉ざし外出を禁ず。無断で外出する者は、天母教の反逆者として処罰する!」
東河郡は一瞬にして人心惶々となり、民衆は皆戸を閉ざして鍵をかけ、外の足音に耳を傾け、窓の隙間から武器を持った兵士たちが通り過ぎるのを恐れながら見つめていた。
世は乱れようとしているのか?
重い足音が街道に響き、甲冑を身につけ武器を手にした兵士たちが、郡府を水も漏らさぬように包囲していた。
戦いはすでに始まっており、府衙内の寇若智と十二絶頂、縣尉は、府衙外の大軍を見て、表情は非常に重かった。
「寇軍師、蔣平山は早くから伏兵を配置し、我々を一網打尽にしようとしているようです!」
縣尉は深刻な表情を浮かべた。
「教内に裏切り者がいて、情報が漏れたのだ。見よ、あれは神威軍だ!」
寇若智は動揺を見せず、手の羽扇で指さした。
郡城の大通りには、重い甲冑を着て、腰に長刀を差し、長槍を持ち、鎧をまとった軍馬に乗った一隊が轟々と進んでくる。抵抗する天母教の信徒たちは、この軍勢の前では紙のように脆かった。
十数名の一流の高手が共に突撃しても、結局は長槍に貫かれた。
これが斉国の名高き神威軍だ!
縣尉は息を呑み、驚愕して言った。「まさか神威軍を東河郡に派遣するとは、これは斉國朝廷が我が教の企みを早くから知っていたということか?
「今回は、皇太子争いの終結を機に、許家の清算を始め、我々を誘い出して殺そうとしているのだ!」
寇若智は冷笑して言った。「愚かな斉皇も、配下には一二の有能な者がいるようだ。だが我々を包囲殺戮しようとは、痴人の夢だ。
「行こう、これからは許家の対応を見守るとしよう。」
寇若智は身を翻し、他の者たちも直ちに従った。
「神威軍か、許炎と神威軍、どちらが優れているか見物だな!」
寇若智は呟きながら、一行を率いて地下道に入り、府衙から脱出した。
そのとき、府衙での戦いはすでに終わりに近づき、天母教徒たちは敗れていた。
……
許家の屋敷内に、潘藥師が十数人を連れて戻ってきた。