李玄は中庭に立ち、初めて人々が賑わう場所に来て、感慨深く思った。異世界に来てから今日こそ、本当にこの世界に足を踏み入れたと感じた。
夜が訪れた。
縣の通りは人通りが少なくなり、静けさに包まれていた。
その時、雲山縣衙内では、県知事、縣尉、主簿が一堂に会し、あの乞食と露店商人も居合わせていた。
上座に座っているのは県知事ではなく、粗末な麻布の服を着た老人だった。
「確かめたところ、町に入ってきた貴人は許君河の馬鹿息子と、その師匠だ」
乞食は奇妙な表情で言った。
「許炎?あの若者が彼の師匠?そんなはずはないだろう!」
県知事は驚きの表情を浮かべた。
「これまで許君河の馬鹿息子が見つけてきた隠れ住む高人は、みな精神の輝く老人だったのに、この若者はせいぜい数歳年上くらいだ...」
彼には、あの若者がどんな方法で許炎を弟子にしたのか理解できなかった。
上座に座る麻布の老人が口を開いた:「許君河は頑固で、巨大な富を持ちながら民衆を憐れむことを知らず、我が天母教への入信を拒むばかりか、我が教徒を捕らえて官府に引き渡した。
「彼の息子がここにいるのは、我が教のために利用するのにちょうど良い。
「後ほど我が教の大義で彼の師匠を感化し、心から我が教に入信させよう」
県知事は頷いて言った:「護法の仰る通りです!」
麻布の老人は立ち上がり、言った:「皆、東河郡に注目しろ。今回の大計は失敗は許されない。許君河の厄介事はもうすぐ門前に来る。もし彼が折れれば、救うこともできる」
「護法様ご安心を。寇軍師が東河郡で全体を采配しております。必ずや東河郡を手中に収めることができるでしょう」
乞食は敬愛の表情で言った。
「うむ!」
麻布の老人は頷いた。寇軍師は天母教の知恵袋であり、彼が采配すれば必ず万全となるはずだ。
「許炎の小僧の師匠を感化しに行くぞ。我が教に入信させるのだ!」
「はっ!」
県知事たちは麻布の老人に続いて縣衙を出た。
...
中庭では許炎が修行をしており、李玄は椅子に座って本を手に読んでいた。
これは彼が人に買わせた、斉国で流行している話本だった。
彼は非常に興味があった。この馬鹿弟子の許炎が、なぜ話本を読んだ後、世の中に強大無比な武道があると信じ込み、
あちこちで高人を探して師事しようとしたのか。