「緋色の月か……」
アーロンは呟いた。この世界で多くの恐ろしい存在を目にし、数々の邪神が生まれた時の呟きを聞いてきたが、その中でも特に黒日と緋色の月が最も心を震わせるものだった。
理由は単純で、頭を上げれば彼らを見ることができるからだ。これは彼らが塵世にもたらす影響がいかに恐ろしいかを示している。そしてこの世界の人々は、目覚めていても潜在的な狂気の因子を持っているため、黒日と緋色の月の影響を最も受けやすいのだ。
この時、彼は琳の瞳に緋色の色が宿るのを見た。少女は喉を鳴らし、唾を飲み込み、小さな顔には欲望が満ちていた。いや、渇望と言うべきかもしれない!
彼女は小屋で眠るエイクを渇望するように見つめ、自身のある種の欲望を抑えきれないほどだった。彼女は喜びながら彼の血肉を貪り、その甘美さと新鮮さを味わいたがっていた。
琳の目には赤い色が流れていた。
しかし、彼女は最後に莫大な意志力で自分の欲望を抑え込んだ。
少女は最後に横を向き、歩きながら赤い血の塊と化して、闇の中へと消えていった。
彼女の後ろで、アーロンはこの一部始終を見つめながら、呟いた。「緋色の月上の存在——血肉の母樹、その領域は血肉と母性なのか?確かにその信者は血肉を貪ることに強い興味を示しているようだ。他のことについては、さらなる観察が必要だな。」
……
翌日。
エイクが目を覚ますと、琳が自分の傍らで安らかに眠っているのを見つけた。少し幼さの残る小さな顔には笑みが浮かび、まるで良い夢でも見ているかのようだった。
彼が部屋を出ると、黒日の村の雰囲気が普段と違うことに気付いた。
人々は緊張した面持ちで集まり、至る所で燃える子が率いる部隊が走り回っていた。
「伊戈おじさん、何かあったんですか?」
エイクは知人を見つけると、すぐに前に出て尋ねた。
「侵入者だ。昨夜、村に侵入者が現れたんだ!」濃い顎髭を蓄えた伊戈は、深刻な表情で言った。「おそらく他の邪神を信仰する異教徒だろう!奴らは我々の仲間を襲い、可哀想なバンジーとメリーは骨も残さなかった……」
「異教徒だと!」
エイクは息を呑み、すぐに狂信的な表情に変わった。「大祭司が解決してくれるはずです。」