第112章 怨霊憑依(八丈河盟主様に祝福を!)

アーロンは、クラーク・ダースが本物の考古学者のように祭壇の埃を丁寧に払う様子と、ブルースが見習いのように不器用に石柱を撫で、拡大鏡で細部を観察し、その材質と年代を判断しようとする様子を見比べて、思わず笑みがこぼれそうになった。

「でも全体的に見れば、『秘』の道は相当良いものだ。『秘史學者』は古代の遺跡を見つけて儀式を完了し、秘密を守れば、その能力は複雑で多様になる...ん?なんだか私に向いているような?」

アーロンは周囲を見渡し、この遺跡が既にかなり崩壊しており、靈性素材や神祕の知識の痕跡が全くないことに気付いた。ほとんどの非凡者にとっては、無用の長物だった。

しかし『秘史學者』から見れば、ここは明らかに未発掘の宝庫だった!

そう考えている時、ブルースの体が微かに震え、何か得体の知れない変化が起こり始めるのを目にした。

「私は来た、私は見た、私は考究した...」

「偉大なるものは消え去るとも、秘史は永遠に記憶される!」

ブルースは涙を流しながら、恍惚とした、まるで人形のように霊界語で箴言を唱えた。

アーロンは分かっていた。彼が遺跡から『秘』の靈性を吸収することに成功し、半ば非凡者となったのだと。

「そういえば、どの道にも靈性を奪取する儀式があるな。人からでも物からでも...だが、どんなに成功率の高い儀式でも、リスクはあるはずだ」

「しかし『秘』の道が遺跡や古物から靈性を吸収するというのは、もしかすると長い歴史の時の流れで、残された穢れを洗い流すためなのか...これが『考古瞑想術』の核心?」

その時、アーロンは突然、強い風が襲いかかってくるのを感じた。

考える間もなく、白水晶が嵌め込まれた細い杖を抜いた。

パン!

黒い影が吹き飛ばされた。それはブルースだった!

しかし今の彼は、表情が恐ろしく歪み、眼球は黒と赤の血管で埋め尽くされていた。

「ゴホゴホ!」

ブルースは白い泡を吐きながら、突然両手を伸ばして自分の首を絞めた。

まるで自分が自分の仇敵であるかのように激しく絞め付け、すぐに顔が真っ赤になった。

「これは...怨霊の憑依か?」

アーロンは少し悟ったように言った。「こういう古い遺跡には、確かに怨霊のようなものが存在する可能性があり、以前の非凡者も報告していた...」

彼の推測では、おそらくブルースが靈性を獲得した瞬間、ある怨霊の注意を引き、遺跡内の神秘学的な繋がりを通じて、直接ブルースに憑依したのだろう!

「考古隊員も危険な仕事なんだな」

アーロンはため息をつき、指を鳴らして、霊界語で一言呟いた。「光!」

光!

白熱灯のような眩い光がブルースの目の前に現れ、爆発した...

この光によって、アーロンはブルースの体に奇妙な変化が起きているのを見ることができた。一瞬は彼本人で、一瞬は古めかしいハンターの服を着た、血まみれの蒼白い顔のハンターに変わっていた。

「出て行け!」

アーロンはブルースが変身する瞬間を狙って攻撃し、杖で再びブルースを強く打った。

「あっ!」

怨念に満ちた悲鳴が耳元で響き、一つの幽かな影がブルースの体から叩き出され、空中に浮かんでハンターの姿となった。その目からは幻のような鮮血が流れ落ちていた。

怨霊の周りで光が暗くなり、その中に透明で幻のような粘つく触手、歪んだ異様な手足、狂気に満ちた邪悪な目が浮かび上がった...

「怨霊の幻術か?!」

アーロンは嘲笑うように言った。「もし怨霊一匹でこんな大騒ぎができるなら、外には生きている人間なんていないはずだ」

彼は指を鳴らした。「浄化!」

先ほどよりも強い白い光が現れ、燃え盛る炎となって触手や手足、目に絡みついた...

これらの幻影は、まるでシャボン玉のように、針で突いたかのように破裂した。

そして、さらに多くの白い炎が怨霊に降り注ぎ、それを悲鳴を上げさせた。

最後に、白い炎が消えると、地面には暗い光を放つ粉塵が残されていた。

「これも一種の靈性素材だろうな?」

アーロンは自然に前に進み出て、金属の箱を取り出し、粉塵を集めた。「『影』や『冥』の道を行く非凡者は、これを好むだろうな」

彼が立ち上がると、騒ぎを聞きつけて駆けつけてきたクラークを見た。

この秘史學者は、まだブラシを手に持ったまま、この光景を見て即座に推測した。「怨霊か?」

「ああ、もう私が始末した」

アーロンは嗅塩の瓶を取り出し、ブルースの鼻の下に当てた。

「私は女じゃない!」

すぐにブルースは目を覚まし、文句を言った。そして自分の首を触りながら、先ほどの出来事を思い出し、全身が震えた。

「大丈夫か?」

クラークは学生に尋ねた。

「まあ...」

ブルースは恨めしそうにアーロンを見つめた。「ただ杖で打たれた二箇所が...痛いです!」

「ああ、それなら問題ない!」

アーロンはクラーク・ダースに向かって言った。「教授、何か発見はありましたか?」

この話題になると、クラークの表情は非常に興奮したものとなった。「私はここに確かに『印』が存在することを確認し、遺跡から歷史回顧の『エレメント』を見出した...私の予想通りだ。とても簡単に完了できる。ただ、君たちの助けが必要なんだ!」

この瞬間、彼の表情は敬虔で熱狂的で、さらに何か不気味なものを帯びていた。

ブルースは全身の震えが更に激しくなり、無意識にアーロンの後ろに隠れた。

アーロンは心の中で思考を巡らせた。

「蓮食いの民は『赤』の道の組織...」

「ここは最初の『食屍鬼』が誕生した場所だ。だから高い確率で印が残されている!この印は食屍鬼のものだ!」

「歷史の中の『食屍鬼』の能力を得るには、エレメントは何だ?」

そう考えながら、彼は思わず銃のホルスターに手を伸ばした。

ちょうど良い、前からこいつを始末したいと思っていたところだ。

「先生...いいえ...」

ブルースの声は泣き声を帯びていた。この瞬間、場の空気が凍りついたようだった。

クラーク・ダースは軽蔑的な表情を浮かべた。「君たちの目に見えるのは無知と疑惑と恐れだけだ...信頼が全くない!私がそんなに力を求めて手段を選ばない人間だと思っているのか?」

「それは...先生...その『エレメント』とは一体何なんですか?」

ブルースは干からびた笑いを浮かべた。

「遺跡から答えを得た。『歷史回顧』の儀式を行うには、正確な時間は必要ない。ただその出来事が起きた場所で、一つのエレメントを完了すれば良いだけだ...そのエレメントとは—『食屍』だ!」

クラーク・ダースは平然と言った。「もっとも、私は前もって準備していた。登山バッグの中に入れてある」

「ずっと...ずっとそんなものを背負っていたんですか?」

ブルースは目を見開き、次の瞬間吐き出しそうな様子だった。