林逸は頷いた。なるほど、エンターテインメント界の大物か!
このようなナイトクラブやKTVで財を成した人々は、全員とは言わないが、多くは多かれ少なかれ闇の背景を持っている。
しかしそれも仕方のないことだ。結局のところ、このような娯楽施設には様々な人が出入りし、トラブルを起こす者も少なくない。強力なバックグラウンドがなければ、経営など成り立たないのだ。
「この街では相当な影響力を持っているようだな」
林逸はそのような事実に、鍾品亮を恐れる気持ちは全くなかった。
彼の目には、社会の大物も企業の社長も、自分の父親ほど恐ろしくは映らなかった。
もし林じいさんを怒らせたら、本当に死ぬほど殴られるだろう。しかも、自分には抵抗する余地すらない。
「鍾家なんて大したことないさ」
康曉波は軽蔑するように口を歪め、明らかに鍾品亮に対して良い感情を持っていないようだった。むしろ嫌悪感すら感じられた。「金持ちと言えば、楚夢瑤の家こそが本物だよ。鍾品亮の家は市内に数軒の娯楽施設を持っているだけだが、楚家は真の実業グループで、国内に多くの支社を持っているんだ」
楚鵬展の実力について、林逸はある程度理解していた。鵬展グループを空母に例えるなら、鍾家の事業は小舟程度のものだろう。
楚夢瑤がこの成り金を軽蔑するのも当然のことだった。
「随分詳しいじゃないか!」
林逸は笑みを浮かべた。
康曉波は顔を赤らめ、少し恥ずかしそうに言った。「楚夢瑤の経歴や背景を知らない男子なんて、うちの学校にいないよ。でも陳雨舒の方は比較的謎に包まれているんだ」
「どういうこと?」
林逸は興味を持った。陳雨舒の家族には会ったことがなかった。
ただ、陳雨舒は毎日楚夢瑤の家の車で送り迎えされ、放課後も楚夢瑤の家で食事をしているのを見ると、楚夢瑤に便乗しているような印象を受けていた。しかし今の康曉波の話を聞くと、そうでもないようだ。
「陳雨舒の兄貴は特殊部隊の兵王らしいんだ。小説に出てくるような、すごく強い奴さ!以前、高校一年の時、家柄を鼻にかけた男子が陳雨舒を追いかけまわして、うまくいかないとわかると卑劣な手段を使おうとしたんだ。それを陳雨舒の兄貴が知って、その男子を半年も入院させるほど殴りつけた。相手の家族は文句一つ言えず、むしろ陳家に謝罪に行ったんだ」