第40章 彼の言葉を信じるの?

「大丈夫だよ」

林逸は軽く笑って言った。「麻酔薬は好きじゃないんだ。副作用があるから」

執刀医は一瞬戸惑ったが、すぐに頷いた。林逸がそこまで主張するなら、そうするしかない。

この手術は生命の危険はないので、無理強いする必要もなかった。

「若いの、我慢するんだぞ!」

執刀医はそう言うと、看護師に手術の準備を指示した。

林逸は痛みを恐れないというわけではないが、この程度の痛みなら耐えられる範囲だった。

昔、西星山の山頂から落ちた時の方が遥かに痛かった。あの時は五臟六腑が全部ずれるような痛みだった……

「君はどうやって怪我したんだ?」

執刀医の孫為民は経験豊富な外科医で、医術が優れているだけでなく、人を見る目も確かだった。

林逸は銃創を負っているが、警察が連れてきた容疑者のようには見えなかった。そのため、孫為民は彼と積極的に会話を交わし、注意を逸らして痛みを和らげようとした。

「銀行で、盜賊に撃たれたんです」

林逸はもちろん孫為民の意図を理解していた。しかし、林逸の注意力はそう簡単には逸らせない。

林逸は幼い頃から、どんな状況でも油断せず、注意力を散漫にしないよう訓練されてきた。

「そうだったのか」

孫為民は予想通りだと思った。この若者は犯罪者ではなく被害者だと分かり、話しやすくなった。「その時は緊張したでしょう?」

「まあまあです」

林逸は笑って答えた。「実は、あの状況なら避けることもできたんですが、私の後ろに女の子がいて、私が避けたら彼女が危なかったので、仕方なく撃たれました。バカみたいですよね?」

林逸は以前、山奥でこのような報道を見たことがあった。善行を行う人が馬鹿にされ、逆に冷淡で利己的な人が賢いと言われる。

だから、ここまで話して自嘲的になった。

「えっ?」

孫為民は林逸がそのような理由で怪我をしたと聞いて、この若者に深い敬意を抱いた。「君、すごいじゃないか!これは馬鹿じゃなくて、ヒーローだよ!どうだい、その女の子は一目惚れしてくれたかい?」

「その後、私は盜賊に人質として連れて行かれたので、彼女がどう思ったかは分かりません」

林逸は苦笑いしながら言った。「あの時、彼女は私が彼女のために撃たれたとは思わないでしょう。結局、犯人は私を狙って撃ったわけですから」