「楚おじさん、他に用事がなければ、学校に行ってきます」
林逸は言うべきことを全て言い終え、後の処理は楚鵬展に任せることにした。
「ああ」
楚鵬展は頷いた。「今日のことは、瑤瑤には言わないでくれ。彼女に心配をかけたくないんだ」
「ご安心ください、楚おじさん。余計なことは言いません」
林逸は立ち上がり、帰る準備をした。
「李福、逸くんを学校まで送ってやってくれ」
楚鵬展は傍らの福おじさんに命じた。
「はい、楚先生」
福おじさんは頷いて承諾した。
「いいえ、結構です。下でタクシーを拾えばいいので」
林逸は急いで言った。薬局に寄るつもりだったし、福おじさんに付いてきてほしくなかった。ある事は、あまり他人に知られたくなかったのだ。
「そうか」
林逸がそう言うのを聞いて、楚鵬展も強要しなかった。「会社の問題を解決するまでの間、瑤瑤の安全を頼むよ」
「ふん」
林逸は手を振った。「楚おじさん、私の任務が楚さんに関係している以上、正式な任務開始前に彼女に何かあるようなことはさせません」
楚鵬展は頷き、そしてため息をついた。
元々この件は林逸にとって得だと思っていたが、今見ると、林逸は楚夢瑤にあまり興味がないようだ。
父がどのように手配したのかは分からないが、もういい、彼の言う通りにすればいい。
「李福、後で総務部に連絡して、会議室の準備をするように伝えてくれ。午後に取締役会を開くから!」
楚鵬展が林逸の送迎を福おじさんに強要しなかったのは、他に福おじさんに頼みたいことがあったからだ。
「承知いたしました、楚先生」
福おじさんは頷き、素早く楚鵬展のオフィスを出た。
楚鵬展には専属の秘書がいたが、多くの事は秘書に知らせることができず、福おじさんという側近にしか任せられなかった。
そのため、多くの場合、福おじさんは秘書の役割も果たしていた。
鵬展ビルを出て、林逸は手近なタクシーを拾った。
「お兄さん、どちらまで?」
乗車後、運転手はメーターを下ろしながら尋ねた。
「運転手さん、漢方薬の卸売り場をご存知ですか?」
林逸は松山市の地理に詳しくなかったが、古参のタクシー運転手は生きた地図のように、市内の様々な業種について熟知していた。
「ああ、漢方薬ね。木の枝や草みたいな生薬のことかい?それとも調合済みの漢方薬?」