少女から漂う殺気は、一般人には気づかないかもしれない。
しかし、同業者である林逸は鋭く感じ取ることができた。これも第六感の一種と言えるだろう。
林逸は相手に気づいたが、相手は林逸に気づいていなかった。
長年の修練により、林逸は自身の殺気を完全に隠すことができるようになっていた。しかし、林逸のこの境地に達している者は、極めて少なかった。
結局、林逸は首を振った。少女の身なりは、明らかに人に注目されたくないという意図が見えた。
彼女は怪我をしているようだったが、林逸は助けようとは思わなかった。
他人の事情には関わらないのが良い。同業者かもしれないが、任務遂行中に邪魔されたくないはずだ。
さらに、同業者とはいえ異なる組織に属していて、敵対関係にある可能性もある。
「すみません、傷薬とはどんなものですか?」
林逸は店員に軽く尋ねた。
店員は一瞬戸惑い、その後バカにしたような目で林逸を見た。まるで林逸の質問が愚かで幼稚であるかのように。
彼女は答える価値もないという態度で言った。「もちろん怪我を治す外用薬です。買うなら在庫はありませんけど。」
林逸は苦笑した。おそらく新薬なのだろう、しかも人気商品のようだ。
店員が林逸の質問に答えたくないようだったが、親切に答えてくれる人がいた!
林逸が何か言う前に、隣にいたおばあさんが饒舌に話し始めた。
「お若いの、傷薬も知らないの?康先生はご存知でしょう?漢方醫の名門の康先生は、漢方界では大家なのよ!」
おばあさんは康先生の事績を数え上げるように話し始めた。「傷薬は康先生が開発した速効性の治療薬で、傷を素早く治し、後に傷跡も残らないのよ!すごいでしょう?」
「そんなにすごいんですか?」
林逸は意外に思った。この康先生は相当な腕前で、自分の調合する治療薬と同等なのか?
「そうよ、代々伝わる秘伝の処方だって。この傷薬は、軍に優先供給されていて、生産能力の関係で、民間の薬局には定期的に少量しか供給されないから、とても品薄なのよ!」
おばあさんは続けた。「薬局で買えるなんて、ほとんど不可能よ。私の姪っ子の彼氏の三番目の姉さんの叔母さんの五番目のいとこがXX薬局チェーンの販売部長なの。この前、その縁故で1本買えたけど、入荷したらすぐに内部で消化されちゃうから、店頭に並ぶことなんてないのよ!」