少女から漂う殺気は、一般人には気づかないかもしれない。
しかし、同業者である林逸は鋭く感じ取ることができた。これも第六感の一種と言えるだろう。
林逸は相手に気づいたが、相手は林逸に気づいていなかった。
長年の修練により、林逸は自身の殺気を完全に隠すことができるようになっていた。しかし、林逸のこの境地に達している者は、極めて少なかった。
結局、林逸は首を振った。少女の身なりは、明らかに人に注目されたくないという意図が見えた。
彼女は怪我をしているようだったが、林逸は助けようとは思わなかった。
他人の事情には関わらないのが良い。同業者かもしれないが、任務遂行中に邪魔されたくないはずだ。
さらに、同業者とはいえ異なる組織に属していて、敵対関係にある可能性もある。
「すみません、傷薬とはどんなものですか?」