病院を出て、林逸は近くの薬局で漢方薬を買おうと思ったが、一般的に病院近くの薬局は値段が高めだ。
林逸は少し考えてやめることにした。手持ちの現金と楚鵬展からもらったキャッシュカードはあるものの、必要な漢方薬は普通の薬ではなく、数グラム数両で何千何万もする代物だった。
「林さん、楚先生から先ほどお電話があり、もしお時間があれば、お会いしたいとのことでした」
車に乗ると、福おじさんが林逸に言った。
「ああ?楚おじさんが私を?では楚おじさんのところへ行きましょう。福おじさんもご存知の通り、私は学校以外は特に用事がないので」
林逸は楚鵬展が自分を呼ぶ理由が分からなかった。銀行強盗事件に進展があったのか、それとも昨日学校で黒豹さんとの衝突のことかもしれない。
「承知いたしました。すぐに楚先生にご連絡いたします」
そう言って、福おじさんは電話を取り出し、楚鵬展の番号に電話をかけ、林逸と今から向かう旨を伝えた。
鵬展グループの地下駐車場の警備員は福おじさんのベントレーを知っていて、車が近づく前にバーを上げた。
警備員のこの取り入る態度に、林逸は何も言わなかった。
福おじさんの車は高級車で、同じ車種で同じナンバーを用意して侵入するのは少し手間がかかるだろう。
しかし、あの日銀行を強盗した連中は明らかに普通の人物ではなく、背後には必ず他の人物がいるはずだ。
ただ、幸い地下駐車場に入られても、グループへの影響は大きくないので、林逸は特に何も言わなかった。
エレベーターで上がり、楚鵬展のオフィスの前に着くと、福おじさんはドアをノックし、まず中を覗いた。
楚鵬展の最も身近な人物として、他の人がいても自由に出入りできる立場だった。
しかし福おじさんは一瞥した後、ドアを閉め、待っていた林逸に言った。「林さん、楚先生は今打ち合わせ中です。少々お待ちいただけますか?」
「はい、構いません」
林逸は頷いた。大企業の社長である楚鵬展が何もせずに自分を待っているはずもなく、その間に多くの仕事をこなせるだろう。「トイレに行ってきます。何かありましたら電話してください」
「はい、林さん。トイレはあちらです!」
福おじさんは社長室と反対方向を指さした。