放課後、林逸は急いで高校三年九組へ走って行き、唐韻の席の横の窓をノックした。
しかし、二回ノックしても中にいる唐韻がカーテンを開けて窓を開ける様子はなく、林逸は少し不思議に思った。まさかもうこんなに早く教室を出てしまったのだろうか?
自分は全速力で走ってきたのに、それに前の休み時間に約束したはずだ、処方箋を持ってくると。
そう思いながら、林逸はもう一度強く窓をノックした。もしかして聞こえなかったのだろうか?
今度は、教室の中からようやく反応があり、唐韻がカーテンの端を少し持ち上げた。
しかし窓は開けず、唐韻は頬を赤らめながら、口元に手を当てて林逸に向かって静かにするよう合図をし、手を振った!
これはどういう意味だ?
林逸は困惑した。話してくれればいいのに。話せば唇の動きで何を言っているか分かるのに。「シーッ」とやって手を振るだけじゃ、誰にも分からないじゃないか。
しかしその時、高校三年九組の教室のドアが開き、中年の女性が出てきて、窓をノックしている林逸を見て、厳しい声で問いただした。「誰が窓をノックしているの?あなたはどのクラスの生徒?」
林逸は驚いた。なんで...先生が出てきたんだ?もしかして授業が延長されていたのか?
そう考えると、林逸は冷や汗をかいた。自分がこんなにノックして、先生の授業の邪魔をしてしまったから、怒りに来たのか?
「あの、申し訳ありません。もう授業が終わっていると思って...」
林逸は頭を掻きながら言った。
「あなたは...」
高校三年九組の担任の宋先生は林逸を見て、少し驚いた様子で、先日の運動場での出来事を思い出した。
この生徒は新しい校内四大悪少の一人に選ばれたと聞いている。そんな大事件があったのに何の処分もなかったということは、家柄もそれなりのものなのだろう。
宋先生は眉をひそめた。このような生徒と関わりたくなかった。意味がない。口を酸っぱくして言っても、どうせ聞く耳を持たないだろう。
だから何も言わずに、ただ尋ねた。「窓をノックして何をしているの?」
「唐韻を探しています。」
林逸は苦笑いしながら答えた。
「唐韻を?」