第0207章 黒豹さん逃走

林逸は得をしたくないわけではなく、得をする勇気がなかったのだ。お嬢様がすぐ側で見ているのに、彼女の親友に手を出すなんて?林逸はそこまで無謀ではなかった。

しかし、この感触は本当に悪くないな、手首に触れただけでも、すでにかなりの手応えがあった……

陳雨舒の殺人的な視線を見て、林逸は乾いた笑いを二回ほど浮かべ、もう得をしようとはせず、両手に力を入れると、二本の柵が形を変え、さらに大きな隙間が開いた。

「できたよ」林逸は手を離し、脇に立った。

「え?」陳雨舒は試してみると、とても簡単に柵の中から這い出ることができた。「こんなに簡単なの?」

「こんなに簡単さ!」林逸は頷いた。

「こんなに簡単なら、さっきなんで私を引っ張ったの?」陳雨舒は怒った。「私の胸が、痛くて死にそう!」