林逸は鍾品亮を連れ去った後、当然車に戻って楚夢瑤に何かを言うことはなかった。そうすれば他人に誤解を与えるだけだからだ。
林逸は小さな歌を口ずさみながら、二つの保存容器を手に持って学校の方向へ歩いていった。素晴らしい一日の学校生活がまた始まった。
「林逸!」林逸が学校の門に着いたとき、背後から自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。振り返ると劉欣雯が自分の方に走ってきていた。そして劉欣雯の後ろには、愛らしい美少女が立っていた。唐韻以外の誰でもなかった。
「ふん...」林逸は聞くまでもなく、劉欣雯がまた唐韻の伝言役をしていることを知っていた。「劉欣雯、何か用?」
「韻韻が、お昼に一緒に食事をしようって」劉欣雯の林逸に対する印象も、少し変わってきていた。それも芬ちゃんのことで、林逸が積極的に助けてくれているからで、劉欣雯は林逸に対して以前のような拒絶感はなくなっていた。
韻韻が受け入れて、彼と一緒にいるなら、自分がそんなに気にすることもないだろう?劉欣雯の心の中にも、そんな考えがあった。
「いいよ」林逸は考えもせずに承諾した。お昼に、彼は唐韻にサメの肉の味を試してもらいたいと思っていた。そして、そのサメの貴重なフカヒレを林逸は二つに分けていた。一つは康曉波の容器に入れて、芬ちゃんに渡してもらうように。もう一つは唐韻のために用意していた。
楚夢瑤と陳雨舒については...二人のお嬢様はすでにフカヒレを無視していた。彼女たちの言葉によれば、フカヒレなんて何がおいしいの?ということだった。
唐韻は明らかに学校内で林逸と近づきすぎることに少し恥ずかしさを感じていた。林逸が見ていることに気づくと、すぐに顔を少し赤らめ、そして顔をそらし、林逸を見なかったふりをした。
その一瞬の風情に、通りがかりの男子学生たちは少し呆然としていた。しかし、今は誰も唐韻に手を出す勇気はなかった。誰もが知っていた、唐韻は新しい学校の悪名高い林逸の彼女だということを。鄒若明でさえボコボコにされたのだから、誰がそんな邪な考えを持つ勇気があるだろうか?