第26章 血煞の悪鬼

「妖修か、初めて会ったな。腕を狼の爪に変化させることができるとは」

齊明は黒髪碧眼の妖修を見つめながら言った。「これが'妖修'の特殊能力?それとも法術か?」

「小僧」

黒髪碧眼の妖修は深く息を吸い込んだ。「妖修とは何か知っているか?妖修には二種類ある。妖族が修行して化身の境地に達し'人型'を得るものと、'人族'が'妖道'を歩み、妖族の血脈を練化し、己の身に溶かし込んで妖族の能力と法術を習得するものだ」

「そして私は'人が妖道を歩む'者。最初に練化した妖族の血脈は碧眼妖狼のものだ」

「人が妖道を歩むか」

齊明は冷笑し、この黒髪碧眼の妖修を見つめながら言った。「今の君の姿を見ろ。人でもなく妖でもない。邪道に落ちたとしか言いようがない」

「多くの人族の先人たちが切り開いてくれた正々堂々たる大道があるというのに、なぜこんな妖道という邪路を選ぶのか」

「狂妄者め」

黒髪碧眼の妖修は叱責した。「お前は'妖修'の力がどれほど強大か知らないのだ。今日、その恐ろしさを思い知らせてやろう」

「私の名を覚えておけ!」

「我が名は趙士!」

「死ね!」

ドン!

黒髪碧眼の妖修'趙士'はもはや言葉を交わさず、両足で地を蹴り、体が弾丸のように飛び出した。地面には深い穴が残り、その姿は稲妻のように齊明の前まで迫った。

シュッ!

齊明は靈幻九步を繰り出し、軽々と趙士の攻撃を避けた。鋭い狼の爪から放たれた気刃が地面に三本の溝を刻んだ。

「逃げられはしない」

趙士は叫んだ。

シュッ!シュッ!シュッ!!!

すると。

周囲の巨凶狼が趙士の命令に従い、素早く齊明に襲いかかり、齊明の退路を封じた。巨凶狼の数があまりにも多く、齊明は趙士と戦いながら、巨凶狼の攻撃にも対応しなければならなかった。

しかし幸いなことに。

巨凶狼は数こそ多いものの、実力は平凡で、しかも妖獸なので霊智が低く、齊明に大きな脅威とはならなかった。

ズブッ!ズブッ!

数合の攻防の間に。

齊明の周りにはさらに数体の巨凶狼の死體が転がった。

「師兄!」

姜世成たちは危機的状況にあったものの、今のところ生命の危険はなかった。齊明が巨凶狼の群れに囲まれ、さらに妖修趙士とも戦わねばならない状況を見て、心配し始めた。

「必ず死なせてやる!」

趙士は咆哮し、妖力を運転して集中させ、いくつかの法印を結んだ。「妖狼嘯!」

「お前の魂で'天魁傳承'の封印を解いてやる」

ガオォォ!!

すると。

趙士が両手を前に突き出すと、法印が妖力を吸収して空中に巨大な青い狼の頭が現れ、咆哮を上げながら齊明に襲いかかった。

「人として生きることを拒み、妖修になりたいというのなら」

齊明は冷たい眼差しで言った。「望み通りにしてやろう。来世は畜生道に落ちるがいい」

キィン!キィン!

剣の鳴りが響き渡る。

齊明は陳氏斬妖劍を手に、一筋の青雲劍意を纏わせ、剣を突き出した。剣光が閃き、たった一撃で青い狼の頭を打ち砕き、無数の光の粒子となって散った。

シュッ!シュッ!

齊明の姿が瞬く間に移動し、靈幻九步を全速で展開した。趙士に一切の隙を与えることなく、瞬時に趙士の目の前まで迫った。

「貴様!!!」

趙士は驚愕の表情を浮かべた。

ガオォォ!

危機的状況の中。

白毛の狼王が咆哮を上げながら襲いかかってきた。

「巨蜥の盾」

ドン!

齊明は左手を振り上げ、巨蜥の盾を繰り出した。空中に現れた巨大な土色の盾が、白毛狼王の攻撃を防いだ。

「御風剣術」

シュッ!

齊明の剣法が変化し、もともとの捉えどころのない'青雲剣術'から'御風剣術'へと変わった。剣術が風を操り、速度が一気に上昇した。

「やめろ!!!」

趙士は恐怖の表情を浮かべ、危機的状況の中で防禦符寶を繰り出し、前方に構えた。それは青い円形の盾だった。

バキバキ!

ドン!

齊明の剣気が降り注ぎ、まるで堤防を突き破るかのように、趙士の防禦符寶を真っ二つに切り裂いた。この一撃を防ぐことはできなかった。

ブシュッ!

趙士は血を吐き、胸にこの一撃の余波を受けて、血まみれの傷が刻まれた。その顔には既に恐怖の色が満ちていた。

「練気六層!!!」

趙士は恐怖に目を見開いた。彼は齊明が'練気六層'だとは夢にも思わなかった。入門してわずか三年の雑役弟子が、すでに練気六層に達しているなんて。

そして。

齊明が使う法術の境界レベルも低くはない。

このような天賦。

どうして雑役弟子なのか?

少なくとも外門には直接入れるはずだ!

「奴を止めろ!」

趙士はもはや戦う勇気も意志も完全に失っていた。

彼は練気五層後期の妖修に過ぎず、法術も符寶も齊明に及ばない。勝ち目など全くない。

だから。

逃げ出し、この件を他の仲間に知らせようと考えた。

吼!吼!!

巨凶狼の群れは趙士の命令に従い、命知らずのように齊明に襲いかかった。齊明は冷ややかな目で見つめ、慌てる様子もなく、一枚の符咒を取り出した。

「血煞厲鬼符」

刷!

齊明が右手を振り、霊力を注入して'血煞厲鬼符'を発動させると、血黒色の符咒が空中で破裂し、恐ろしい殺気と鬼気を放った。

瞬く間に。

髪を振り乱し、鬼気漂う、背筋の凍るような血煞厲鬼が現れた。

道具:血煞厲鬼符

説明:使用すると練気七層の血煞厲鬼を召喚し、使役することができる。

血煞厲鬼符は明らかに血煞鬼符よりもはるかに強力だ。血煞鬼符は練気三層の血煞鬼しか召喚できないが、血煞厲鬼符は練気七層の血煞厲鬼を召喚できる。

その差は非常に大きい。

「惡鬼!」

趙士は胆を潰しそうになった。「こ...これは...、こんな符咒まで持っているとは、これは惡鬼だぞ!最弱でも練気七層だ!」

「先輩は練気七層の惡鬼まで操れるとは」

「本当に予想外だ」

「すごすぎる」

姜世成たちは息を呑み、驚愕の表情を浮かべた。齊明先輩が強いだけでなく、こんな恐ろしい手段まで持っているとは。

「殺せ!」

齊明が右手を振り、血煞厲鬼に攻撃を命じた。練気七層の血煞厲鬼は巨凶狼の群れの中に突っ込み、完全な一方的な虐殺を始めた。

吼!吼!吼!!!

見れば。

次々と巨凶狼たちが悲鳴を上げ、全身の血肉の精気が血煞厲鬼に吸い尽くされ、地面には乾いた死體さんばかりが残された。

この隙に。

齊明は靈幻九步で巨凶狼の群れを飛び越え、趙士を追撃し、その逃げ道を遮った。陳氏斬妖劍が直接斬りかかってきた。

「待て!」

趙士は大声で叫んだ。「'天魁傳承'がどこにあるか知りたくないのか?'天魁傳承'が欲しくないのか?」

「私を殺せば、何の情報も得られなくなるぞ」

「興味ない」

齊明は冷静に応じ、手にした陳氏斬妖劍は少しも躊躇わず振り下ろされ、趙士の妖力を打ち砕いた。

噗!

「あぁっ!」

趙士は悲鳴を上げた。危機一髪で急所は避けたものの、両腕を肩から切り落とされ、地面に血を撒き散らした。

吼!

次の瞬間。

巨凶狼の群れを殲滅した血煞厲鬼が趙士に襲いかかった。趙士は目を見開き、凄まじい悲鳴を上げ、全身から血煞が噴き出した。

「私の仲間たちがお前を許さない!」

瞬く間に。

趙士は精気を完全に吸い取られ、その死體さんは干からびて、目を見開いたまま、成仏できない姿となった。

「良いぞ」

齊明は血煞厲鬼を上下に眺め、その実力に満足げだった。

血煞厲鬼は地面から浮かび上がり、血黒色のボロボロの長衣を纏い、血黒色の長い髪を振り乱し、腐敗した顔の半分しか見えなかった。

男女の区別もつかない。

血煞厲鬼は妖修の趙士と巨凶狼の群れ全ての精気を吞噬したが、大きな変化はなく、実力の向上もほとんどなかった。ただ殺気がより濃くなっただけだった。

「姜世成、お前たち手早く戦場を片付けろ」

齊明は命じた。

「はい」

姜世成たちはハッとして我に返り、すぐに齊明の命令通りに動き始めた。お世辞を言うことすら忘れ、動作が遅れれば血煞厲鬼の餌食になるのではと恐れていた。