霍家を離れた萧塵は、すぐには帰る気はなかった。
せっかく省都に来たのだから、この機会に観光でもしようと思った。
しばらく歩くと、誰かが影で付いてきているのに気づいた。
「この霍青松は……」
萧塵は霍青松が差し向けた者だと分かっていたが、気にせず、付いてくるままにしておいた。
霍家の件は少し複雑で、単に霍林が奇病にかかったというだけではなかった。
彼が省都に留まったのも、状況を観察したかったからだ。
……
萧塵は賑やかな繁華街を一回りしたが、蘭寧市とさほど変わらないことに気づき、少し退屈に感じた。
気がつくと、明月山に来ていた。
街中の喧騒とは違い、ここだけは景色が良く、空気が特に澄んでおり、わずかながら霊気の香りさえ漂っていた。
山道を登っていくと、途中で天然の滝を見つけた。十数丈の高さから流れ落ちる様は、とても壮大だった。
「ここは悪くない場所だな!」
空気中に漂う霊気は依然として薄いものの、街中よりはずっと良く、環境も心が安らぐものだった。
「ねぇ、田舎者、もう上がらないでよ!」
美しく魅力的なファッショナブルな少女が萧塵の前に現れ、警告するような口調で言った。
萧塵は振り返って彼女を一瞥し、尋ねた。「なぜ上がってはいけないんだ?」
「だって今日から、明月山頂のこの土地は全部私のものなんだから!」
少女は傲慢に、まるで萧塵に自慢するかのように言った。
「この土地を買ったのか?」萧塵は尋ねた。
「もちろんよ。この土地は一番上にある別荘に付属してるの。私の彼氏がその別荘を買って私にプレゼントしてくれたの。だからこの周辺の土地は全部私のものよ。部外者は立ち入り禁止!」
「別荘?」
萧塵は興味を持った。
明月山頂に別荘があるとは、一度見てみたいものだ。
そこで彼は立ち去るどころか、さらに山の上へと歩き始めた。
「ねぇ、人の話が聞けないの?」
少女は怒り心頭で、萧塵を追いかけ、追い返そうとした。
しかし彼女がどんなに走っても、「歩いている」萧塵に追いつけなかった。
約2分後、二人は一人が歩き一人が追いかける形で山頂に到着した。
「本当に別荘があるじゃないか!」
萧塵はそれを目にした。