「お嬢様!」
玲ちゃんは気が付かない間に、お嬢様が下へ走り去ってしまったことに驚いた。
しかしすぐに元気を取り戻し、「お嬢様、頑張って!きっとあいつを倒せます!」と声援を送った。
「蝶お嬢様の剣は、その人と同じように美しいわ!」曹雁雪は地面に置かれた翡翠の細剣に見とれていた。
翡翠の細剣は、剣身も柄も同じ緑色で、剣の刃は極めて薄く、少し力を入れて振るだけで折れてしまいそうだった。
萧塵は笑って言った。「確かに変わった剣だが、彼女は面紗を付けているじゃないか。素顔を見たこともないのに、どうして美しいと分かる?もしかしたら醜女かもしれないぞ?」
「そんなはずないわ!」
曹雁雪は碟千舞の素顔を見たことはなかったが、絶世の美女であることを確信していた。
理由はない。ただ直感的にそう感じるだけだった。
「私のお嬢様を侮辱しないで!」玲ちゃんは更に怒り、萧塵に向かって冷たい表情で言った。「私のお嬢様は世界一美しいんです!」
「本当かな?」萧塵は尋ねた。「じゃあ、なぜどこへ行くにも面紗を付けているんだ?醜さを隠しているんじゃないのか?」
「あまりにも美しすぎるから面紗が必要なんです。そうしないと、あなたたちみたいな男性がお嬢様を見て、よだれを垂らすに決まってます!」
「師匠はそんな浅はかな男性ではありません!」曹雁雪は反論した。
「世の中の男性はみんな同じよ。雁雪おねえさんも綺麗だから、彼があなたを弟子にしたのも別の目的があるかもしれないわ。気を付けた方がいいわよ」玲ちゃんは真剣に忠告した。
曹雁雪はそれを聞いて、苦笑いを浮かべた。
しかし、以前は彼女も玲ちゃんと同じような考えを持っていた。世の中の男性はみんなそんなものだと。
萧塵に出会うまでは……
「もういい、この試合をよく見ていろ!」萧塵は二人の会話を遮った。
……
「碟千舞?」
于任通はしばらく考え込んで、その名前にどこか覚えがあるような気がした。
「大将、彼女は華夏風雲ランキングで第十六位の天の御姫様ですよ。気を付けてください!」
後ろから、青が于任通に注意を促した。その口調には微かな面白そうな響きがあった。
ここで碟千舞に会えるとは、彼も予想外だったようだ。
「風雲ランキング、碟千舞!」
于任通はようやく思い出し、覇天虎と対峙した時以上に深刻な表情を見せた。