今の武道界で、最も注目され、最も議論を呼んでいる人物といえば、萧塵をおいて他にいないだろう。
彼の突然の出現は、四年間輝いていた沈逸仙を一気に押しのけた。
萧塵の謎めいた身分や経歴はさておき、二十歳にも満たない若さで風雲ランキングのトップ5に迫る実力を持っているという事実だけでも十分驚異的だ。
そして彼の名を一躍有名にしたのは、何と言っても羅青を斬り殺したことだろう。
風雲ランキングの天才たちが争い、武を競うのはよくあることだ。
しかし彼らの試合は、常に手加減して終わるものだった。
萧塵は、羅青を直接殺してしまったのだ。
風雲ランキングのトップ10に入る天才を育てることがどれほど難しいことか?
羅青のような重要人物の陥落は、間違いなく武道界にとって大きな損失だった。
そのため、萧塵はわずかな時間で、沈逸仙を上回る話題性を獲得した。
そして先週、沈逸仙が公に萧塵に決闘を申し込んだが、萧塵はそれを無視し、再び彼の名が武道界中に広まることとなった。
だからこそ今、萧塵が衆人環視の中で自分の名を明かした時、場は一瞬静まり返った。
「萧塵?彼が最近物議を醸している萧塵なのか?」
「同姓同名だろう?萧塵という名前はありふれているし、同じ名前の人がいても不思議じゃない!」
「いや違うと思う。同姓同名の可能性はあるけど、彼の外見が噂と似ていると思わないか?」
人々はその言葉を聞き、一斉に萧塵を見つめた。
萧塵の名声は高かったが、実際に彼を見たことがある人は少なく、萧塵の外見に関する情報は口伝えに広まっていた。
比べてみると、確かに萧塵によく似ていた。
周囲の議論に、萧塵は無視を決め込み、元沖に向かって言った。「信じられないなら、とりあえず私についてくればいい」
「それは…」
元沖はまだ躊躇していた。
萧塵の名声から考えれば、彼が騙すとは思えない。
しかし問題は、目の前の萧塵が本物かどうかわからないことだった。もし偽物だったら?
以前、護劍山莊の外で楚行歌を名乗る者がいて、通り抜けようとしたことがあった。
「小僧、お前が本当にあの萧塵なのか?」
そのとき、馬面の青年が席から立ち上がり、萧塵に向かって言った。