「くそっ、あいつが本当に実直な人間だと思ってたのに、まさか猫をかぶった虎だったとは!」
徐代歡は心の中で文句を言いたくなった。
しかし考え直してみれば、萧塵は最初から最後まで何も言っていなかった。自分が勝手に思い込んでいただけだ。
「萧塵!」
凌筱竹は呟いた。心の中で突然、不安な気持ちが湧き上がってきた。
彼がこんなに強いなんて。武道界全体が彼に注目し、沈逸仙さえも彼の手に敗れたのだ。
自分と彼は、まるで違う世界の人間なのではないか?
「いけない、何とかして萧塵を守らなければ!」
凌天豪もこの時、心に思いを巡らせていた。
以前萧塵を見下していたのは問題ない、今ならまだ挽回するチャンスがある。
もし萧塵が彼と一緒に天下を取れば、凌家の台頭は止められないだろう。
その瞬間、その場にいた人々はそれぞれ思いを巡らせていた。
しかし萧塵と賀無銘にとっては、今は特に考えることもなく、彼らの目にはただ互いの姿しかなかった。
「そんなに自信があるなら、剣を出してみろ。一撃だけチャンスをやろう!」
萧塵は淡々と立ち、平然と相手を見ていた。
その姿勢は、まるで今彼の前に立っているのが風雲ランキング第四位の天才ではなく、ただの通りすがりの人であるかのようだった。
「一撃?」賀無銘は侮辱されたように感じ、叫んだ。「多すぎる!」
言葉が落ちると同時に、数百斤もある重剣が彼の手によって軽々と振り回された。
重剣に鋭さなし、大巧は技を要せず。
重剣の真髄とは、愚鈍な剣術の中に、精巧な極致を隠すことにある。
重さで軽さに勝ち、拙さで巧みさに勝ち、大きさで小ささに勝つ。
そして賀無銘は間違いなく重剣の真髄を存分に発揮していた。
彼の力は、一見荒々しいが、実際は重きを軽々と扱う。
彼の剣術は、一見鈍重だが、実際は非常に精巧だ。
「重剣無鋒・断天式!」
賀無銘は重々しく叫び、重剣に鋒はないが、天を指せば天が崩れ、地を引けば地が裂ける。
一剣を振るい、振り返ることなし!
神様に会えば神様を殺し、仏に会えば仏を斬る!
「早く...早く下がれ!」凌天豪は表情を急変させ、場内の萧塵に向かって叫んだ。
その場にいた人々も、恐怖に震えていた。
賀無銘はあまりにも強大すぎた。この一撃はおそらく数萬斤の力があり、人力では抗うことができない。