第50章 英雄は少年より出ず

葉錯は冷たい声で言った。「金はない。どけ」

その女は艶やかに微笑み、その顔は咲き誇る桃の花のように美しかった。「お兄さん、あなたは東さんに勝てるほどの実力者のようね。でも、賠償金を払わないと、ここから出られないわよ」

葉錯は笑みを浮かべた。「そうかな?試してみようか?」

傍らの従業員たちはオーナーを見つめた。「唐さん、どうしましょう?」

バーを経営する女性として、唐墨秋は多くの荒波を乗り越えてきた。彼女は葉錯に微笑みかけながら言った。「警察に喧嘩の件が知られたら、罰金は免れないし、学校にも通知されることになるわよ」

葉錯は彼女を見つめて言った。「警察にあなたのバーが未成年に営業していることが知られたら、どうなると思う?」

唐墨秋は言葉に詰まり、美しい大きな瞳で目の前の少年を上から下まで観察した。

隣の個室のドアが開き、端正な顔立ちの男性が、グラスを揺らしながら、興味深そうに外の人々を見つめていた。唐墨秋は彼に微笑みかけた。「南宮様、些細な問題で申し訳ございません」

南宮様と呼ばれた男性は軽く微笑み、葉錯を上から下まで観察し、目を細めて何かを考えているようだった。殺し屋としての鋭い直感を持つ葉錯は、この男を見た瞬間、全身の毛穴が一斉に開いたかのように、強烈な危険の予感に襲われた。

葉錯はその男性に一瞥を送り、唐墨秋の言葉は全く耳に入らなかった。

その男性は葉錯が自分を見つめているのを見て、グラスを少し上げた。その超強力な危機感は徐々に消えていった。葉錯は彼に敵意がないことを感じ取り、軽く頷いて視線を外した。

しかし、先ほどの一瞬の感覚だけで、葉錯はこの人物が非常に恐ろしい達人であることを判断するには十分だった。

……

雲海市のある豪華な古風な建築の庭園で、二人の老人が庭で囲碁を打っていた。

彼らがいるこの庭園は、一目では果てが見えないほど広大で、古風な建築物や木造の回廊があり、蘇州の庭園のように、亭台楼閣、假山や池、茂った林と竹、金魚や蓮の花、湖や花園が揃っていた。

このような大きな庭園は、地価の高騰する雲海市では、お金があっても手に入れることができないものだった。ここに住める者の身分の高さは想像に難くない。

その二人の老人は、庭の東屋に座り、一方には波立つ湖水、もう一方には清々しく優雅な曲がりくねった小道のある庭があった。