第58章 人形を取る

怒った女性と理を説くべきではない。なぜなら、彼女たちは自分こそが理だと言うからだ。

これは葉錯が長い逃亡の末に得た真理だった。

「まだ追いかけてくるの?」葉錯は頭を抱えながら、後ろで息を切らしている雲霓を見た。もし罪悪感がなければとっくに姿を消していただろう。この子は絶対に彼に追いつけないはずだった。

雲霓は彼を睨みつけた。「私を弄んだわね。殺してやる」

葉錯は言った。「おい、あれは僕のファーストキスだぞ。純情少年のファーストキスは黄金より貴重なんだ。料金を請求しないのは、同級生としての大きな恩恵だと思えよ」

「死んじゃえ!私のファーストキスでもあるのよ。私のほうがあなたの百倍大事なの」雲霓は葉錯に向かって叫んだ。

葉錯は笑いながら言った。「そうか、じゃあ互いに借りも貸しもないってことだ。これからはお互い別々の道を行こう」