向こうの夜市で、雲霓と葉錯の二人は道中ふざけ合いながら歩いていた。葉錯は紳士らしい振る舞いは一切なく、雲霓も淑女とは程遠かった。
その夜、雲霓はずっと憂鬱な状態だった。まず葉錯に地面に押し倒されてパンツの色を見られ、次に不注意で初キスを奪われ、最後に賭けにも負けて、これからは葉錯の言いなりになるはめになった。考えるだけで今日は大損したと感じずにはいられなかった。
隣を歩く葉錯を見ながら、雲霓は彼をつねって仕返ししたくなった。しかし葉錯の反応は素早く、そんな機会を与えるはずもなかった。
「葉錯、さっきはけっこう気前がよかったじゃない。五千元ってあなたにとって小さな額じゃないでしょう?なのにどうして目も瞬きせずに返しちゃったの?」雲霓は少し気になった。
裕福な家庭の学生でも、五千元は決して小さな額ではない。そして葉錯の家庭環境が豊かでないことは、学校中が知っていた。
葉錯は言った:「だって五千元じゃ少なすぎるからさ。」
「え?」雲霓にはよく理解できなかった。
葉錯は続けた:「俺が昔仕事を引き受けた時は、報酬は数千萬ドル単位だったんだ。今回たった五千元じゃ、誰かに知られたら面目丸つぶれだろ。絶対に受け取れないよ。」
「何言ってるの?でたらめな自慢話ばっかり。」雲霓は葉錯を相手にするのをやめた。
彼女は葉錯が「人の命を救うお金を取るのは忍びない」とかそんな答えを期待していたのに、まさか金額が少なすぎると言われるとは。やはり——「心が全然優しくない!」雲霓は心の中で葉錯に対してもう一度評価を下した。
そう思うと、雲霓はまた思わず葉錯をつねろうとした。葉錯は彼女の手を払いのけ、「また手を出すと殴るぞ」と言った。
雲霓は冷たく鼻を鳴らし、心の中で葉錯を罵った。本当に女性を大切にする心のない人だと。
「もう手出さないわよ。あなたを見てるだけでイライラする。帰るわ。」雲霓は身を翻して歩き出した。
葉錯は後ろから「送っていこうか?」と声をかけた。
「いらない!」雲霓はきっぱりと言ったが、心の中では少し迷いがあった。もし葉錯が是非とも送ると言い張ったら、断るべきだろうか?
しかし雲霓がそのことを考えている間に、葉錯はすでに「わかった、じゃあ先に行くよ」と言い出した。
「ちょっと!もう少し誠意を見せてよ!」雲霓は激怒した。