葉錯は逍遙遊の身法を展開し、一見通り抜けることが不可能に見える人混みの中を、まるで一匹の魚のように、人々の隙間をすり抜けていった。
一人の小者が阿離さんを抱えて、個室の外へと走り去ろうとしていた。葉錯が追いかけようとした瞬間、ミチコを取り囲んでいた人影の一人が分かれて、葉錯に向かって攻撃してきた。
葉錯は身をひるがえし、素早く手を伸ばして窓のカーテンを引きちぎり、それを天から降らせるように相手にかぶせた。
「やあ!」小者の一人が刀を振りかざして突進してきた。葉錯は脇にある酒棚のボタンを押すと、酒棚の扉が弾け飛び、ぱちんと小者の顔面に直撃した。小者は鼻を押さえ、苦しみながら倒れた。
葉錯は酒棚から二本の酒瓶を取り出し、ぼんぼんと二発、カーテンに覆われた人影の頭に叩きつけた。