第204章 大火

葉錯は逍遙遊の身法を展開し、一見通り抜けることが不可能に見える人混みの中を、まるで一匹の魚のように、人々の隙間をすり抜けていった。

一人の小者が阿離さんを抱えて、個室の外へと走り去ろうとしていた。葉錯が追いかけようとした瞬間、ミチコを取り囲んでいた人影の一人が分かれて、葉錯に向かって攻撃してきた。

葉錯は身をひるがえし、素早く手を伸ばして窓のカーテンを引きちぎり、それを天から降らせるように相手にかぶせた。

「やあ!」小者の一人が刀を振りかざして突進してきた。葉錯は脇にある酒棚のボタンを押すと、酒棚の扉が弾け飛び、ぱちんと小者の顔面に直撃した。小者は鼻を押さえ、苦しみながら倒れた。

葉錯は酒棚から二本の酒瓶を取り出し、ぼんぼんと二発、カーテンに覆われた人影の頭に叩きつけた。

「阿離さん!」南宮竹幽は涙を流しながら、阿離さんを連れ去る小者を追いかけた。側にいた別の二人の小者が飛び出してきて、南宮竹幽の腰を抱え上げ、彼女も連れ去ろうとした。

葉錯は前に飛び出し、二発の拳で二人を倒し、南宮竹幽を救出した。南宮竹幽は慌てて「阿離さん」と叫んでいた。

葉錯は手を上げ、回転する刃の光が飛んだ。阿離さんを抱えて逃げていた小者は「あっ」と悲鳴を上げ、地面に倒れた。

「阿離さん、こっちに這ってきて!」

阿離さんは投げ出されて涙が出ていた。白くぽっちゃりした小さな手で目を拭いながら、泣きながら葉錯の方へ這っていった。

「小僧、死ね!」燕少爺は葉錯が阿離さんを救おうとした一瞬を狙い、幽霊のように素早く葉錯の側に迫り、小さな短刀を葉錯の肩に突き刺そうとした。

葉錯は振り向く暇もなく、手の甲で一撃を背後に放った。

「あっ!」二つの闇うめき声が響いた。

短い短刀は葉錯の肩に直接刺さり、葉錯のその一撃も燕少爺の腹部に確実に命中した。燕少爺はもはや隠しきれず、口から血を吐き出した。

同時に、側にいた二人の小者が酒瓶を持ち上げ、地面を這う阿離さんに向かって叩きつけようとした。

葉錯は猛然と飛び込み、阿離さんの上に身を投げ出した。

「ばん、ばん!」二つの酒瓶が葉錯の頭に直撃し、無数の破片が飛び散った。葉錯は阿離さんを抱き上げ、地面から鉄パイプを拾い上げ、すぐに二発振り下ろした。