蘇乘羽と蘇笑笑は刑事課に連れて行かれ、それぞれ取調室に入れられた。蘇笑笑は頭が良く、ただ蘇乘羽のことを心配して、時々冷静さを失うことがあった。
蘇笑笑は冷静を取り戻すと、絶対に蘇乘羽に迷惑をかけてはいけないと悟り、質問に対して何も知らないと一点張りで答えた。
もう一つの取調室で、方晴は蘇乘羽の資料を持って入ってきた。
「蘇乘羽、27歳。3年前にひき逃げで3年6ヶ月の実刑判決を受け、模範囚として半年減刑され、数日前に出所したばかり。この3年の刑期は無駄だったのか?出所したばかりなのに、路上で車を奪って暴走するとは。」
方晴は厳しい口調で威圧的に言った。
「なぜ車を奪ったんだ?」
「妹を迎えに行くためです」と蘇乘羽は答えた。
「妹を迎えに?タクシーを使えばよかったじゃないか?」
「あの車は新しくて高そうだったので、ベテランドライバーとしては手が疼いて、ちょっと乗ってみたくなった。車が壊れたなら、賠償します」と蘇乘羽は言った。
「当然賠償してもらうわ!でも今は、賠償金だけでは済まないわ。危険運転と強盗の容疑で刑事責任を問われることになるわよ」と方晴は叱責した。
蘇乘羽は黙り込み、自分の身分を明かすべきか迷っていた。
許叔母よ許叔母、一日の夫婦でも百日の恩があるというじゃないか。見捨てたりしないよな?一夜限りの露の縁でも、夫婦は夫婦だ!
許南枝が助けてくれないなら、蘇乘羽は切り札を出すしかない!
方晴も蘇乘羽の取り調べを続ける気はなく、林初雪が来るのを待つことにした。
林初雪の性格からして、この件は簡単には済まないだろう。林家は霖江で根を張っており、人脈も広い。蘇乘羽は厳しい目に遭うことは間違いない。
しばらくすると、許南枝と林初雪が到着した。
「方晴、私の車を奪った奴はどこ?出てこさせなさい!」
林初雪は車から降りるなり、殺気立った様子で言った。
「取調室にいるわ。案内するけど、お嬢様の気性は少し抑えてね」と方晴は言った。
「なぜ彼女の車を奪ったの?」と許南枝は好奇心から尋ねた。
「本人の供述によると、初雪の車が新しくて高級で性能も良かったから、一時の出来心で乗ってみたかったそうです。しかも前科があって、以前人身事故を起こして、出所したばかりです」と方晴は説明した。