麗雅グランドホテル。
蘇乘羽は蘇笑笑を部屋に連れ戻し、彼女の顔を優しくマッサージすると、すぐに蘇笑笑の顔の腫れは引いた。
「シャワーを浴びてきなさい」と蘇乘羽は言った。
蘇笑笑は立ち上がるなり服を脱ぎ始めたが、幸い蘇乘羽は用心していたので、すぐに目を閉じた。
「バスルームで脱ぎなさい!」蘇乘羽は額に青筋を立てた。
「えへへ、また忘れちゃった」
蘇笑笑は茶目っ気たっぷりに笑いながらバスルームに入った。蘇乘羽はようやく目を開け、ため息をついた。この子と一緒に住むなんて、いつか参ってしまいそうだ。どうしたものか。
蘇笑笑はすぐにシャワーを済ませて出てきて、蘇乘羽の胸に飛び込んできた。今日は危機一髪だったが、蘇笑笑はまだ心の動揺が収まらないようだった。
「お兄ちゃん、怖いの。一緒に寝て」蘇笑笑は蘇乘羽の胸にすり寄りながら甘えた。
「笑笑、もうすぐ警察が来るかもしれない。でも心配いらない。もし尋問されても、何も知らないと言うんだ。廃工場での出来事は、絶対に話してはいけない」
蘇乘羽は廃工場での殺人が発覚することを心配してはいなかった。帰りの際、神力で確認したが、あの辺りには監視カメラはなかった。
陳俊も通報する勇気はないだろう。この件は彼には及ばないはずだ。
ただ、路上で車を奪い、カーチェイスまでしたのだから、車の持ち主は必ず通報するだろう。警察はすぐに捜査に来るはずだ。
「お兄ちゃん、また刑務所に入れられちゃうの?私、離れたくない」
やっと蘇乘羽が出所して兄妹が再会できたのに、蘇笑笑は彼を失うことを恐れていた。
「大丈夫だ」
蘇乘羽の言葉が終わるか終わらないかのうちに、部屋のドアが開き、方晴が数人の同僚と共に突入してきた。蘇笑笑は驚いて蘇乘羽の胸に身を隠した。
「二人を逮捕して連行しろ」と方晴は命じた。
「ちょっと待ってください。電話をかけてもいいですか?」と蘇乘羽は尋ねた。
「だめだ!」男性警官が厳しい口調で言った。
「弁護士に電話するんです。なぜいけないんですか?これだけの人数がいるんだから、逃げられるわけないでしょう」
「かけさせてやれ」と方晴が言った。
蘇乘羽は礼を言い、携帯を取り出して許南枝に電話をかけた。